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生前贈与で資産承継対策

税金

税理士 / 大住 文夫

このコラムの内容は、2010年(平成22年)8月現在のものです。

財産を承継させる側が考えたい一番の義務は、子供達の幸せです。
相続が“争族”にならないための対策のひとつが、相続時精算課税制度です。
今回は、相続時精算課税制度を利用して、上手に生前贈与する資産承継対策のポイントをご紹介します。

相続と生前贈与のメリット・デメリット

相続税と贈与税の比較

皆さんご存知のように、贈与税の税率は相続税の税率よりはるかに高くなっています。また、贈与税の基礎控除額は年間110万円で、相続税の基礎控除[5,000万円+1,000万円×法定相続人の数]とは大きな差があります。

簡単に言うと、一時に全財産を移転する場合は、相続税が有利と言えます。

しかし、贈与は好きな時に、好きな相手に自由にできますから、方法によっては贈与のほうが有利になります。

例えば、贈与税には毎年110万円の非課税枠がありますから、長期的な対策としてうまく使えば、資産承継の大きなメリットになります。ただし、現預金等の贈与は、名義借りとならないように注意が必要です。

また、収益物件や将来収益が見込まれる財産については、相続時精算課税制度(2,500万円まで非課税・2,500万円超は税率20%)を選択して、一挙に贈与する方法もあります。

税金以外の贈与のメリット

高齢化が進む中、被相続人が認知症などを患った場合、自由に財産を動かすことができず、相続人が介護費用などで金銭的に苦労するケースがあります。その点、生前贈与は、相続人が若いうちに資産を承継できるため、マイホームの購入や土地の有効活用など、さまざまな行動を起こすことができます。

相続時精算課税制度で賢い資産承継

贈与時の相続財産が相続税の基礎控除額以下のケース

相続時精算課税は、贈与時に相続税評価額が確定するため、贈与後に財産の評価が上がったり、収益が生じたりしても、相続時に課税が生じることはありません。ですから、収益物件や将来値上がりが見込める財産については、相続時精算課税が有利になる場合が多々あります。

贈与時の相続財産が基礎控除額を超え収益物件などの財産があるケース

仮に、親が収益物件を所有していて、年間収益が200万円あったとすると、毎年その分の相続財産が増えていくことになります。相続時精算課税で収益物件を子に贈与すれば、結果的に毎年の収益を無税で子に贈与することができ、相続財産が増えるのを防ぐことができます。

受贈者である子には収益に対する所得税等がかかりますが、贈与者が高額所得者の場合は、トータルに見ても毎年の所得税・住民税が少なくなります。

例えば、贈与者の課税所得が1,800万円を超える場合、所得税・住民税の合計税率は50%です。一方、受贈者の課税所得が195万円以下の場合、合計税率は15%です(図表参照)。よって、受贈者に所得がない場合、年間収益200万円の収益物件を贈与すれば、両者の税率の差35%分[200万円×35%=70万円]が毎年節税できます。

【図表】所得税・住民税の合計税率表

課税総所得金額等 税率
以下
195万円 15%
195万円 330万円 20%
330万円 695万円 30%
695万円 900万円 33%
900万円 1,800万円 43%
1,800万円 50%

※住民税率(都道府県民税4%・市民税6%)含む

相続時精算課税制度の留意点

贈与者は65歳以上の親、受贈者は贈与者の推定相続人である20歳以上の子(子が亡くなっている場合は20歳以上の孫)と適用対象者が決まっています。年齢は贈与の年の1月1日現在のものですので、注意が必要です。

また、いったん相続時精算課税を選択すると、贈与者が亡くなるまで継続して適用され、毎年110万円の基礎控除がある暦年課税に変更することはできません。

相続時精算課税の適用を受けた贈与財産は、相続発生時に相続財産に加算され、相続税と支払済みの贈与税の差額を納税することになります。この場合、相続時には財産分与がなく、生前贈与でもらった財産を全部使い果たしていたとしても、納税が出て来るケースがあります。

遺言書だけに頼らない争族を防ぐポイント

遺言書を作成すれば、被相続人の意思が明確に表示できます。しかし、それでもトラブルになることがあります。それぞれの相続人は、遺言書に定められた相続財産が遺留分(法定相続分の2分の1)に満たなければ、他の相続人に対して「遺留分の減殺請求」を申し立てることによって、自らの相続分を守ることができるからです。

この遺留分の計算は、過去に被相続人から受けた財産も加算して財産総額を算出するので、よく相続人の間でトラブルになります。ましてや、相続時精算課税による贈与は、相続発生時に相続財産に加算して1枚の申告書に相続税の計算をし、相続人の連名で提出しますので、生前贈与時にオープンにしておくことがトラブルを避けるポイントです。

財産を引き継がせる側が、元気なうちに自ら家族と話し合いの場を持ち、皆の納得を得ながらご自分の意思で行えば、遺言書の作成や相続時精算課税による生前贈与も、さらに効果的になるでしょう。


プロフィール

大住 文夫氏 近影

大住 文夫(おおすみ ふみお)

1990年(平成2年)、税理士試験に合格。1991年(平成3年)、近畿税理士会和歌山支部に会員登録、開業。法人・個人顧客の決算業務の他、資産税のエキスパートとして相続対策にも造詣が深い。TKC全国会資産対策研究会会員

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