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計画的なリフォームで所得税対策

税金

税理士 / 稲場 広宣

このコラムの内容は、2010年(平成22年)6月現在のものです。

借り手市場の現代、安定した賃貸住宅経営を持続するには、建物の劣化を防ぎ、居住環境の品質を維持するためのリフォームがますます重要になってきています。同じリフォームをするなら、税務対策も併せて考えたいものです。
今回は、計画的なリフォームによる所得税の節税対策について説明します。

計画的なリフォームを実現するには

第一に、所有する賃貸物件は、将来のどのような「時期」に、どのような「内容」のリフォーム工事が必要で、それにはどのくらいの「費用」がかかるのか――を把握することが大切です。

入居者の退去に伴う原状回復工事や突発的な災害などによる修繕等の予測は困難ですが、屋根や外壁の劣化による補修工事や、給水ポンプ・給湯器・エアコンなどの設備関係の交換は、ある程度「時期」と「費用」の予測が可能と思われます。

その上で、家賃収入の一部で定期積立をするなどの資金の準備を行えば、適切な時期に適切な費用を掛けてリフォームを行うことができ、資産としての賃貸住宅を長持ちさせることが可能になります。

リフォーム時期の分散と所得税の節税対策

賃貸住宅の屋根や外壁の塗り替え工事は、一般的にまとまった費用がかかりますが、これらの支出は「修繕費」として一時に必要経費に算入できることは、『税金(2008年9月号)賃貸住宅リフォームの税務』で説明をしました。

では、複数棟の賃貸住宅を所有するオーナーさんがこれらの工事を行う場合、所得税の節税対策上は、一度に実施するのと、年を分けて実施するのと、どちらが有利でしょうか?

ここでは、2棟の塗り替え工事を行う場合の【計算例】を検討してみましょう。

【計算例】2棟の賃貸住宅の塗り替え工事

  • オーナーAさんのX1年、X2年の家賃収入は各1800万円。工事前の必要経費と各種所得控除を控除した後の課税所得は1000万円で、他に収入はありません。
  • 塗り替え工事の見積額は、1棟あたり400万円で計算します。
  • 所得税の計算は【図表】を参照してください。

リフォーム前の所得税

X1年分 1000万円×33%−153.6万円=176.4万円
X2年分 X1年と同じ
所得税合計 176.4万円×2=352.8万円

リフォーム後の所得税(1) X1年に2棟の工事をした場合

X1年分 ●課税所得
1000万円−400万円×2棟=200万円
●所得税
200万円×10%−9.75万円=10.25万円
X2年分 リフォーム前のX1年と同じ
所得税合計 10.25万円+176.4万円=186.65万円

リフォーム後の所得税(2) X1年とX2年に分けて工事をした場合

X1年分 ●課税所得
1000万円−400万円=600万円
●所得税
600万円×20%−42.75万円=77.25万円
X2年分 X1年と同じ
所得税合計 77.25万円×2=154.5万円

所得税の節税額

●2年間の所得税合計の差額は・・・
(1)−(2)=32.15万円

結論

【計算例】では、(1)より(2)のほうが、2年間の所得税が約32万円少なくて済む結果となり、節税という観点から考えると、工事時期を分散させたほうが有利になります。

これは、所得税の超過累進税率により、高所得の部分にはより高い税率で課税されるため、2年に分けて支出をするほうが、高所得部分を2度に分けて減らすことができ、節税効果が大きくなるからです。

ただし、所得水準によっては、効果が軽微またはまったく無い場合もありますので、個別に試算が必要になります。

いずれにしても、事前にリフォームの計画と準備をしっかりしておけば、このような節税策も十分に検討することができます。

所得税の税額速算表

課税所得金額(万円) 税率(%) 控除額(万円)
以下
195 5
195 330 10 9.75
330 695 20 42.75
695 900 23 63.6
900 1800 33 153.6
1800 40 279.6

※所得税額の計算式
課税所得金額(1000円未満切捨て)×税率−控除額

賢いリフォームのためのその他の注意点

工事を分散させた方が税務上は有利と言っても、一度に工事を行うほうが費用は安くて済む場合もあると思います。そのため高額の工事費用を一度に支出し、結果としてその年の不動産所得が赤字になるケースも考えられます。

この場合、その損失は給与所得や年金などの雑所得と相殺(損益通算)ができます。それでも赤字が残る場合は、青色申告であれば、翌年以降3年間にわたり損失を繰り越しの上、所得から控除する(純損失の繰越控除)などの特典があります。なお、白色申告の場合は、損失の繰り越しはできず、切り捨てになりますので注意が必要です。

また、青色申告者のもう一つの特典である「取得価額が30万円未満の少額減価償却資産について、一時に必要経費に算入できる規定」(2012年(平成24年)3月31日まで)は、年間総額300万円までの部分との制限があります。

これらの点も考慮の上、税務のメリットがとれる賢い計画的なリフォームを検討してください。


プロフィール

稲場 広宣氏 近影

稲場 広宣(いなば  ひろのぶ)

税理士法人・四谷会計事務所 パートナー税理士。1985年、東洋信託銀行(現 三菱UFJ信託銀行)に入行。多忙な銀行業務の中、6年間で税理士試験に合格。金融資産運用・ローン・遺言信託などのコンサルティング、銀行経理・税務の担当など幅広い業務を経験後退職。現在、四谷会計事務所パートナーとして税務全般の業務を担当。特に不動産税務を中心とした資産税に豊富な経験実績があり、自らもアパートオーナーとして地主・オーナーと同じ視点で考える不動産の有効活用、賃貸経営の法人化、所得税・相続税の節税対策などに定評がある。パナホームの各種セミナー、研修会等の担当講師としても活躍。

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