税金賃貸住宅は個人経営と法人経営、どちらが有利?

公認会計士・税理士深代 勝美PROFILE

このコラムの内容は、2018年(平成30年)1月現在のものです。

個人事業主として賃貸住宅を経営する場合と、資産管理会社などを設立して経営を法人化する場合があります。オーナーさまの中には、法人化すべきかどうかで迷っておられる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、相続税対策と所得税対策の観点から、個人経営の場合と法人経営の場合をシミュレーション。どちらが有利か比較してみましょう。

賃貸住宅の個人所有と法人所有、相続税評価額はこうなる

下の図表は、個人所有の更地評価額1億円の土地に、賃貸住宅を借入金1億円で建築した場合に、個人と法人の相続税評価額がどうなるかをシミュレーションしたものです。

個人名義で賃貸住宅を建てると、1億円の土地は、賃貸住宅を建築することで貸家建付地として8,200万円に、1億円の賃貸住宅は固定資産税評価額で評価され、さらに借家権が控除されるので、3,500万円になります。その結果、相続税評価額は8,300万円も減少します。

一方、法人名義で建てる場合は、「無償返還の届書」を税務署に提出して、固定資産税の3倍程度の地代(通常の地代)を地主に支払う方法が一般的です。地代を支払わないことも可能ですが、地代を支払うと個人の土地評価が20%下がります。

賃貸住宅は法人名義ですから、個人の土地の評価が2,000万円減少して8,000万円になるだけで、相続税対策としての即効性はありません。

個人と法人の相続税評価額を比較 ~個人の土地に借入金で賃貸住宅を建てた場合~

個人名義の相続税評価額

建築前 建築後
土地 100,000,000円 82,000,000円
建物 0円 35,000,000円
借入金 0円 △100,000,000円
合計 100,000,000円 17,000,000円

相続税評価額は8,300万円減少

  • ●土地の更地評価額:1億円
  • ●建物の建築価額:1億円

  • ●借入金:1億円

法人名義の相続税評価額

建築前 建築後
土地 100,000,000円 80,000,000円
建物 0円 0円
借入金 0円 0円
合計 100,000,000円 80,000,000円

相続税評価額は2,000万円減少

<試算条件>
借地権割合:60%/借家権割合:30%/建物の固定資産税評価額:建築価額の50%

法人(不動産所有会社)による所得税節税のメリット

(1)不動産管理会社から不動産所有会社へ
個人で賃貸住宅を建築し、設立した不動産管理会社に管理料を支払い管理してもらうことによって、所得税の節税を図る方法があります。しかし、管理ですと管理料が5%~8%程度しか取れないだけでなく、税務上とかく問題が生ずる方法です。したがって、最近は賃貸住宅名義を法人名義とすることで節税を図ることが多くなりました。
(2)不動産の法人名義で所得税を節税

子どもが会社を設立して、会社から妻や子どもに給与を支払うことで節税をします。所得税は累進課税ですから、所得を1人でなく何人かに分散させれば所得税の税率を引き下げることができます。さらに、給料をもらった家族は、それぞれ給与所得控除を受けられますから、全体で見るとダブルの節税効果があるわけです。

例えば、不動産所得が1,000万円の場合、個人名義であれば、所得税・住民税・事業税の合計が300万円となります。一方、法人名義にして、1,000万円の所得から家族3人に333.3万円ずつ給与を支払うと、3人の所得税・住民税の合計は83.34万円。個人名義の場合と比べて、年間約217万円(300万円-83.34万円)も節税できます。

(3)相続税対策にも有効です
また、年間1,000万円を給与で家族3人に渡せれば、1,000万円の相続財産が減少しますので、生前贈与するのと同じ効果を得ることができます。個人の相続税の税率が30%とすると、300万円(1,000万円×30%)の節税となり、10年続ければ3,000万円の節税効果があります。

相続の即効性なら個人名義、長期的な節税対策なら法人名義

賃貸住宅の建築当初は、個人名義の方が相続税の節税効果は高いですが、借入金の返済や家賃収入の蓄積などにより、長い目で見ると法人名義の所得税節税効果のほうが大きくなります、つまり、給与を渡せる家族がいて、相続開始まで時間があれば、法人名義が良いとされています。

個人・法人の節税分岐点は、一般的には建築から10年以内に相続を迎える場合には個人名義、それより期間が長いとされる場合には法人名義が有利とされています。

個人名義か法人名義かを判断するには、ご自身の正確な節税分岐点を知ることが大切です。
税理士に計算してもらってください。

公認会計士・税理士深代 勝美(ふかしろかつみ)

深代 勝美氏 近影

税理士法人深代会計事務所 理事長。1974年に公認会計士2次試験合格し、同年デロイト・ハスキンズ&セルズ会計事務所(現 Deloitte Touche Tohmatsu)入所。1985年に深代会計事務所を設立。日本公認会計士協会東京会 顧問、日本公認会計士協会資産課税部会 元・部会長、(独)中小企業基盤整備機構 事業承継税制検討委員など、公職を歴任。

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