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2016年度予算に見る高齢者住宅への国の施策

市場動向

医療・介護コンサルタント / 山下 友利

このコラムの内容は、2016年(平成28年)6月現在のものです。

国土交通省はサービス付き高齢者向け住宅について、供給の加速や多様な居住ニーズに応じた整備の推進を図るため、2015年度補正予算に引き続き、2016年度予算においても建築・改修費に対し、補助を拡充するとしています。
高齢化が急速に進む中、高齢者の居住の安定を確保することを目的に、国土交通省・厚生労働省の共管制度として2011年に創設されたサービス付き高齢者向け住宅。5年目を迎える今、なぜ国が供給を加速させ、整備量の拡大を図らなければならないのでしょうか。その背景や課題について解説します。


なぜ今、サ高住の整備拡大が必要とされるのか

安倍内閣が提唱する「一億総活躍社会の実現」に向け、緊急に実施すべき対策の重要テーマとなっているのが「介護離職ゼロ」です。介護のために仕事を辞める人をゼロにするべく、具体的な施策としては、介護施設・在宅サービス及びサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の整備量を約12万人分前倒し・上乗せし、約50万人分以上に拡大するなどとしています。しかし、2011年(平成23年)にサ高住の制度が創設されて以来、建築・改修費に対する補助金交付、住宅金融支援機構の要件緩和による融資実施、所得税・法人税にかかる割増償却、固定資産税の減額、不動産取得税の軽減措置といった施策を打ち出し、供給促進が図られてきました。なぜサ高住の供給をさらに加速させ、整備量の拡大を図らなければならないのか。その背景には、医療保険制度の改革も大きく影響しています。

サービス付き高齢者向け住宅整備事業

2017年度末までに着手するものに関し、下表の通り補助を拡充する。

補助拡充の対象 拡充後の補助限度額補助拡充の対象
住宅 住宅面積30㎡等を確保した夫婦向けのサ高住 135万円/戸
(現行:100万円/戸)
既存ストックを改修するサ高住 150万円/戸
(現行:100万円/戸)
上記以外のサ高住 120万円/戸
(現行:100万円/戸)
施設 宿泊機能を伴う地域のサービス拠点を併設するサ高住 施設住宅1,200万円/施設
(現行:1,000万円/施設)

※国土交通省住宅局「平成28年度住宅局関係予算決定概要」より


医療保険制度の改革によりサ高住に求められる役割

団塊の世代が75歳以上となる2025年(平成37年)に向けて、地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築を図ることが大目標となっています。医療保険制度の改革では、入院患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるよう、積極的な退院支援や在宅復帰機能が高い医療機関に対する評価の見直し等を実施するとしています。つまり今後は、平均入院日数は間違いなく短くなり、終末期を迎える方の居場所がなくなるということです。

終末期における療養の場所として「在宅」を希望する方が多い一方で、現実には医療機関で亡くなる方の割合が全体の約70%を占めます。それはなぜかというと、医療を必要とする方が安心して療養できる住まいが不足しているからです。サ高住はあくまで住まいですが、真の価値は付加サービスである医療・介護・生活支援の質と言えます。在宅医療サービス、訪問サービス、通所サービス、日常的な生活援助サービスを包括的に提供できるサ高住は、今後ますます必要とされるでしょう。

地域包括ケアシステムとは

約800万人と推計される団塊の世代が75歳以上となる2025年を目処に、厚生労働省が実現をめざしているのが地域包括ケアシステムです。
重度な介護が必要になった高齢者も、住み慣れた地域で人生の最期まで自分らしいくらしを続けることができるよう、「住まい・医療・介護・予防・生活支援」の5つのサービスを、一体的に受けられる支援体制のことです。


サ高住整備拡大のカギは施主と運営事業者のマッチング

市場環境がこれだけ求めているにも関わらず、サ高住が計画通りに充足しないのは、もう一つ大きな阻害要因があります。運営事業者が一定規模以上の用地や多額の財源を確保しなければ、サ高住を開業することができないからです。

サ高住の供給を加速するには、施主(地主)と運営事業者の役割を分け、双方をマッチングするという仕組みが重要になります。それにより、施主(地主)には、需要が安定した事業に投資でき、地域の高齢者に安心・安全な住まいを提供することで社会貢献ができるというメリットがあります。また運営事業者には、初期投資が少なくて済み、事業参入がしやすく、かつ事業運営に集中できるというメリットがあります。

ただし、双方のマッチングをスムーズに進め、施主(地主)・運営事業者ともに成功していただくためには、サ高住の設計・建築、運営に関して質の高い情報やノウハウ、数多くの実績を持つ信頼できる企業をパートナーに選び、活用することがポイントになるでしょう。



プロフィール

山下 友利氏 近影

山下 友利(やました ともかつ)

株式会社アクシンパシー代表取締役。医療機関の機能分化、地域医療におけるネットワーク化が促進される中、医療の効率化をテーマに“継栄”を可能とする医療・介護事業の経営指導、新規立ち上げ支援を行う。また医療・介護のシームレス化に伴い、「医療・介護・住宅」を複合したビジネスモデルによる医療機関の生き残り戦略について、全国で講演やコンサルティング業務を展開している。

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