賃貸住宅経営・土地活用 TOP > 役立つ専門家コラム TOP > 市場動向(2016年2月号)今後の介護ビジネスと土地活用を考える

今後の介護ビジネスと土地活用を考える

市場動向

経営コンサルタント / 齋藤 直路

このコラムの内容は、2015年(平成27年)12月現在のものです。

高齢社会といわれて久しい日本、介護保険制度の導入からも15年がたちます。
しかし、急激な高齢者の増加に対して、特別養護老人ホーム等の住まいの整備が追いついていません。
2013年度には入所待機者が全国に約52万人いると推計され、家族の介護を理由に退職せざるを得ない介護離職者が年間10万人以上といわれています。
今回はこのような社会背景を踏まえ、今後の介護ビジネスの市場と方向性について、高齢者住宅で土地活用をお考えの皆さまにもわかりやすく解説します。


入所待機者、介護離職者ゼロの社会をめざして

2015年(平成27年)の秋に発表された「アベノミクス新3本の矢」では、「安心につながる社会保障」が大きな柱となっています。今後、特別養護老人ホーム(特養)を増やし、入所待機者のうち全面的に介護が必要な要介護3以上の約15万人を、2020年代(平成32年代)初めまでにゼロにすると打ち出しました。加えて、安倍総理は「介護施設の整備、介護人材の育成を進め、在宅介護の負担を軽減する。仕事と介護の両立ができる社会づくりを本格的にスタートさせたい」とし、介護離職がゼロになる社会をめざすとの目標を示しました。今後75歳以上の高齢者が激増する中、福祉分野を専門とする経営コンサルタントの立場から見ると、日本の介護市場には大きく3つの課題があります。1つめは高齢者が地域に住み続けるための住まい・施設の整備。2つめは介護人材の不足。3つめは介護サービスの質の評価と向上です。この3つの課題が解決されて初めて、利用者の方が安心し、幸せにくらせる良質な介護環境が生まれます。そのための具体策が打ち出されるか、「新3本の矢」の今後の施策が注目されます。

日本の人口推移と将来推計

※出典:2010年までは総務省統計局「国勢調査」、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)中位推計」


多様化する高齢者のニーズに応えるサービス付き高齢者向け住宅

今後、高齢者人口が増加するにつれ、従来のように安心・安全が保障されることは当然として、介護ビジネスには多様な選択肢が求められると思います。特養は費用が比較的安価で、入所者が80〜100人というような大規模施設が多く、生活保護や人権擁護の観点から整備は重要ですが、誰もがそういう施設でくらしたいわけではないでしょう。

もともと住んでいた家のそばにある、入居者同士が顔を覚えられる程度の規模の高齢者住宅で、部屋も賃貸借契約。自分が必要な介護サービスを別契約で利用しながらくらせる。それが2011年に創設されたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の良いところです。

さらに、民間事業ですから、運営事業者が自由にコンセプトを設定できるのも大きな特長です。例えば、(1)リハビリに特化して入居者が元気になるサ高住 (2)入居者のやりたいこと(例えばお酒を飲む、外出する)ができるサ高住 (3)病院から退院直後の方が安心してくらせる24時間看護師常駐のサ高住 など。

一例をあげると、あるサ高住は「食」に特化し、割烹の料理人を採用して入居者に美味しい料理を提供しています。またあるサ高住では、昔のヒット曲のレコードや懐かしい品々を博物館のようにたくさん展示して、思い出の音楽で入居者の皆さんを喜ばせています。

このように、地域社会に密着し、自由な発想で多様化する高齢者のくらしや介護のニーズに応える魅力あるサ高住が増えれば、これからの超高齢社会はもっと豊かになっていくのではないでしょうか。


緻密なマーケティングと福祉建築のノウハウが重要に

今後、都市部の介護ニーズはますます高まります。日本創成会議の報告によると、東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)では75歳以上の後期高齢者が今後10年間で175万人増加。介護施設の不足が深刻化すると指摘されています。一方で、地方部の地域によっては、サービス過剰となるところも出てくるでしょう。

ただし、一般論では正解が出ないのが介護ビジネスです。例えば、高齢者率や競合施設を調査して、単純に施設数・住宅数だけを見れば充足している地域でも、よくよく分析すると軽度の方向け、重度の方向けに特化した住まいや施設は不足しているというケースがあります。さらに施設数の多いデイサービス等も、需要予測の数値上は充足している地域でも、専門職の有無、リハビリ機器の充実等を確認することで、参入の余地があるケースがあります。最近では「歩行リハビリ専門」「言語療法専門」など特化したサービス・コースも後発で成功しています。介護ビジネスでは、内容まで調査・分析した上で、どういう住まいや施設をつくればその地域で受け入れられるかを導き出す、緻密なマーケティングが重要なのです。

高齢者住宅・施設の建て貸しで土地活用をお考えの方は、介護ビジネスの分野でそうしたマーケティングやコンサルティングのノウハウを持つ企業かどうかがパートナー選びの判断材料になるでしょう。また建築面でも、スタッフ動線、介護のしやすい居室設計など、通常のマンションとは違ったさまざまなポイントがありますので、福祉建築に実績のある設計・施工会社を選ぶことが重要になります。

※2011年(平成23年)5月に発足した有識者らによる政策発信組織



プロフィール

齋藤 直路氏 近影

齋藤 直路(さいとう なおみち)

株式会社スターパートナーズ代表取締役。日本社会事業大学大学院卒。大手コンサルティング会社に入社後、介護サービスに特化して支援。その後、現会社を設立。介護サービスのマーケティングでは、数々の成功を演出し第一人者との呼び声も高い。最近は、高齢者住宅・有料老人ホームの新規開設・集客、介護施設のキャリアパス制度・人事制度構築等の支援をおこなう。主催会員制勉強会・講演多数。厚労省等の介護事業の海外進出に関する調査研究事業委員。著書に「あの介護施設はなぜ、地域一番になったのか!!」(2015年 PHP研究所)などがある。

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