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円滑に進めたい借家立ち退きのポイント

市場動向

弁護士 宮崎 裕二

このコラムの内容は、2015年(平成27年)6月現在のものです。

古くなった賃貸住宅を、これからの社会情勢や賃貸市場に適した建物に建て替えることによって、「入居者がなかなか決まらない」「メンテナンスの費用がかかる」「大地震に耐えられるか不安」といったさまざまな問題を解決することができます。また、後継者に優良な資産を継承することができます。
その建て替えで大きな課題となるのが、現在の入居者との立ち退き交渉です。
今回は不動産・相続を専門とする弁護士の視点から、賃貸住宅の立ち退きを円滑に進めるためのオーナーの心構えや実務のポイントについてご紹介します。


立ち退き交渉は「非のある借家人」から解決する

ひと口に借家の立ち退きといっても、次の2つの場合があります。

  1. 借家人に契約違反など何らかの非がある場合
  2. 借家人に何らの非もない場合

まずは、この2つの仕分けをすることがとても大切です。この仕分けを考えずに借家人全員に同じように立ち退きを求め、大変な目にあったオーナーを知っています。家賃を何カ月も滞納している借家人に対し、解除通知などの法的手段を取らずに真面目な他の借家人と同じように立ち退きを求めたところ、その借家人が自分の非を棚に上げてとんでもない立ち退き料を要求してきたというのです。

オーナーにしてみれば恩をあだで返された気持ちでしょうが、家賃を滞納するような借家人はお金に困っているのですから、立ち退き話を千載一遇のチャンスとみて、高額の立ち退き料を要求してくることは予測しなければなりません。

この事例から学ぶべきポイントは、非のある借家人をまず整理してから、初めて一般の借家人に対して立ち退きの話をもっていくということです。整理とは、交渉により立ち退きの念書を貰う、交渉が無理であれば裁判をして立ち退きの判決を得るということです。

時間的余裕の「ある・なし」で大きな違い

余裕のある者と余裕のない者との争いは、余裕のある者の方が有利であることは自明の理です。テレビのドラマなどでは逆のストーリーもありますが、稀であるからこそドラマになるのです。

特に、オーナーサイドに時間的余裕があるかないかは大きな違いです。借家人にすればすでにそこに居住しているのですから、どっしり構えておれば済みます。しかし、オーナーの方は何らかの事情や理由があって立ち退きを求めるので、時間的な余裕があまりないという場合が少なくありません。

例えば、相続が発生し、敷地を売却するなどして相続税を支払うために、借家人に立ち退いてもらおうとするような場合。相続税の支払い期限との関係で、どうしても焦って交渉せざるをえません。相続税の支払い期限の3カ月前に交渉を始め、あまりに時間的余裕がなかったため、泣く泣く借家人の言い値の立ち退き料を支払った例もあるのです。

そうならないように、建て替えるにしても敷地を売却するにしても、時間的な余裕を持って借家人と交渉を始めることが大切です。特に相続の発生が予想される場合は、早めに立ち退き交渉に動くべきでしょう。


借家人に対して「感情的」にならないこと

金銭にまつわる交渉事は、計算をする「勘定」が大事ですが、もう一つの“かんじょう”、つまり「感情」はもっと大事です。

借家関係が長くなると、オーナーも借家人もそれぞれにいろいろな思いが溜まっています。

オーナーにすれば、「安い家賃で長年住まわせてあげている」「借家人同士の取るに足らないもめ事までこちらに持ってこられた」「本来借家人が負担すべき修理まで請求してくる」などなど。

他方で、借家人の方では、「高い家賃の値下げを要求しても無視された」「隣の音がうるさいので注意をお願いしたのにいっこうに改善されない」「雨漏りの修理もしてくれない」などなど。

オーナーも最初に立ち退き話を持っていくときは、冷静に話そうと努めますが、借家人からの過去の恨みつらみを聞いているうちに、自分の方にも言い分はいろいろあると思い始めます。そうしてお互いに引くに引けない状態になり、とどのつまりは双方の感情が爆発してしまうことがままあるのです。

仕事場ではとても冷静沈着な人でも、このような場面では感情的になることがあります。そうならないためには、少なくとも一人で交渉しないこと。できれば第三者に同席してもらうか、それも難しいようであれば、弁護士に依頼することをお勧めします。

居住用の借家の「立ち退き料」の相場とは

立退料に関する裁判例115例を調査しましたが、実にさまざまな考え方が認められました。

借家権価格から算出する方法、家賃の何カ月分とするもの、莫大な営業補償を認めるものなどなど。

もっとも、居住用の借家については、原則として次の「差額賃料等補償方式」の方向で、ほぼ裁判例も固まってきたように思えます。

■差額賃料等補償方式

[移転費用一式 + 礼金や仲介手数料などの一時金 + 家賃の差額2年分] = 立ち退き料の金額

建て替え実例

お嬢さまへの資産継承を視野に入れ、築40年の木造アパートをスタイリッシュな低層賃貸マンションに建て替え。

実例について、詳しくはこちら


プロフィール

宮崎 裕二 近影

宮崎 裕二(みやざき ゆうじ)

1979年東京大学法学部卒。同年司法試験に合格し、1982年弁護士登録。1986年に宮崎法律事務所開設。2008年度に大阪弁護士会副会長、2009年から現在に至るまで大阪地方裁判所調停委員を務める。専門は、不動産・事業再生・相続・企業法務。著書に『わかりやすい借地借家法のポイント』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、『借家の立退きQ&A 74』(住宅新報社)、共著に『不動産取引における心理的瑕疵の裁判例と評価』『土壌汚染をめぐる重要裁判例と実務対策』(いずれもプログレス)等多数。

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