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高齢者住宅事業に関わる介護保険改定のポイント

市場動向

コンサルタント / 大坪信喜

このコラムの内容は、2012年(平成24年)8月現在のものです。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスの登場

今般の介護保険法の一部を改正する法律に盛込まれた主な改正点は3点です。

1点目は、地域包括ケアシステムにおける中心的介護サービスとして位置づけられた24時間対応の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービス」の創設です。併せて小規模多機能型居宅介護事業に訪問看護サービスを付加した複合型サービスも創設されました。

厚生労働省が発表した「第5期介護保険事業計画(2012年度〜14年度)」の全国集計結果を見ますと、今後、全国で1割から2割の地域において新設されたサービスが提供される予定です。

事業達成に向け国が支援するサービス付き高齢者向け住宅

2点目は、「サービス付き高齢者向け住宅」の創設です。

地域包括ケアシステムの中では、高齢者向け「住まい」の中心に位置づけられ、国はこの「サービス付き高齢者向け住宅」の供給促進のため、補助金(1戸あたり100万円を上限)を予算化しています。

国が考えている今後の介護サービスの方向性ですが、1点目に挙げました「定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービス」の機能を、この「サービス付き高齢者向け住宅」にも持たせることで、地域包括ケアシステムの理念である在宅介護・居住系サービスの充実を図っていくものと思われます。

国は今後、「サービス付き高齢者向け住宅」を増やしていくために、上記の建設時補助金に加えて、所得税・法人税に係る割増償却、固定資産税の減額、不動産取得税の軽減措置等を盛込むことで、民間の事業意欲を喚起する考えです。

過去の例をかんがみても、国が推進する事業は、その事業の達成に向けてさまざまな誘導策や支援策が打ち出されてきました。

サービス付き高齢者向け住宅経営のポイント

では、「サービス付き高齢者向け住宅」の需要はどの程度あるのでしょうか。

現在、特別養護老人ホームへの入所待機者が、全国に42万人いるといわれています。おそらくその特養待機者のうち、在宅で介護を受けられている要介護1〜要介護3までの13.1万人程度が、「サービス付き高齢者向け住宅」の利用対象者になると考えられます。

筆者も、東京都内で「サービス付き高齢者向け住宅」の開設に向けたコンサルティングに係っていますが、事業収支のシミュレーションを行った結果によりますと、高齢者住宅にデイサービス・訪問診療を付加することで、年10%程度の利益が見込まれます。

「サービス付き高齢者向け住宅」の経営ポイントは、単なる高齢者向け住宅の提供ではなく、特養待機者を対象とした介護サービスの提供が必須となるでしょう。家賃については、近傍同種の住宅家賃を大きく超えないことが求められますので、単なる不動産賃貸事業で利益を出すものではありません。

訪問介護だけを提供している、あるいはデイサービス事業だけを経営している介護事業者が、その事業拡大の方策としてこの「サービス付き高齢者向け住宅」を開設。従来から培った介護サービスのノウハウを活用したり、人材を有効活用したりすることで、事業の拡大発展を進めていくことがポイントとなるでしょう。


介護報酬改定ダウンでサブリースに拍車がかかる

最後の3点目は、介護報酬の改定です。

国は改定率を1.2%(在宅分1.0%、施設分0.2%)といっていますが、これは介護報酬に介護職員処遇改善交付金を盛込んだ上での率です。2011年度(平成23年度)までは、介護報酬に対して約2%が交付金として上乗せされていましたが、この交付金2%分を介護報酬の中に入れたことで、実質、0.8%のマイナス改定となりました。

具体的には、訪問介護や通所介護の算定時間が短くなることで大きな影響が出ています。こうした状況に対応するには、経営効率を引き上げていかなければなりません。

ここで有効なのが、「サービス付き高齢者向け住宅」の事業展開です。訪問介護や通所介護が同一建物にあることで、スタッフの移動時間短縮など、経営効率が図られ、さらに入居者にとっても気軽に手厚い介護サービスが受けられるメリットがあります。

しかし、病院や大きな介護事業所にとっても、拡大展開のために自前で土地・建物を持つことには限界があり、土地オーナーさんの力を得て拡大展開をすることが必要になります。

何より、地域の土地オーナーさんに協力してもらうことは、地域包括ケアシステムの考えにマッチしています。今後、土地・建物のサブリースという事業スキームは、さらに拡大していくと思われます。

サービス付き高齢者向け住宅実例

土地オーナーさまと運営事業者さまをつなぐパナホームの<ケアリンクシステム>を利用し、2011年(平成23年)12月にオープンした長野県のケア付高齢者住宅。サービス付き高齢者向け住宅(18室)にデイサービス(定員30名)、訪問介護事業所を併設し、開設2ヵ月で満室となりました。運営事業者さまは今秋、同システムを活用して新規事業所を開設予定。



プロフィール

大坪 信喜氏 近影

大坪 信喜(おおつぼ のぶよし)

医療機関・福祉施設の経営を総合的に支援する(株)川原経営総合センターのシニア・コンサルタント。介護施設現場における実践経験を活かし、社会福祉法人・介護事業所・病院等に専門特化したコンサルティングを得意とする。厚生労働省指定社会福祉施設長資格、東京都認定福祉サービス第三者評価者、川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部非常勤講師。

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