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「高齢者住まい法」の改正と今後の動向

市場動向

株式会社 今瀬ヘルスケアコンサルティング 代表 / 今瀬俊彦

このコラムの内容は、2011年(平成23年)6月のものに、2011年(平成23年)11月に加筆修正したものです。
「高齢者住まい法」は2011年(平成23年)10月20日より施行されました。

施設から住宅へ政策転換 高齢者住まい法改正の背景

わが国の「高齢者の住まい」は、国土交通省と厚生労働省に所管が分かれ、その種類は特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・高専賃など、実に28種類にも及ぶことから、利用する一般国民には非常にわかりにくい制度だとの指摘を受けていました。

また、介護保険制度での給付率が高い特別養護老人ホーム・老人保健施設・介護療養病床(老人病院)の介護3施設は、入所する利用者が要介護者全体の25%であるのに対し、年間7兆円の介護保険給付の45%を占めていることから、家族介護で頑張る在宅要介護者の世帯や、グループホーム・高専賃・有料老人ホームなどの利用者にとっては、不公平だとの指摘もされていました。

高齢化社会のモデルとされている北欧各国では、1980年(昭和55年)代初頭に相次いで「高齢者住宅法」を制定。収容型の介護施設の新設を廃止し、既存施設も高齢者住宅に転換させる方針を打ち出しました。その結果、施設と高齢者住宅の割合を見ると、8割以上を高齢者住宅が占めるようになっています。

今回、「高齢者の居住の安定確保に関する法律(通称 高齢者住まい法)」が10年ぶりに大幅に改正され、2011年(平成23年)10月20日より施行されました。わが国においても介護施設から高齢者住宅へと政策転換が図られることになります。

サービス付き高齢者向け住宅制度の創設とそのメリット

今回の改正で、従来から国民にわかりにくいと批判の多かった高専賃・高優賃・高円賃の制度は廃止され、新たに創設される「サービス付き高齢者向け住宅」制度にすべて統一されます。

これにより、複雑だった建主に対しての公的補助制度が「サービス付き高齢者向け住宅」に一元化され、個人・法人を問わず一律に建築費の10%が公的補助となります(賃貸住宅1戸当たり最大100万円、デイサービスや診療所などの共用部は最大1,000万円)。また、さまざまな税の軽減特例があり、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)からの低利融資(最長35年)も受けやすくなる予定です。

公的補助金が1割、住宅金融支援機構の融資4割の分担であれば、建築資金の融資の柱である市中金融機関の融資審査も比較的容易になるでしょう。資金計画が大幅に組みやすくなります。特に自治体の推薦を受けた案件や、地元医療法人・社会福祉法人・実績のある介護事業者による長期借上げ案件は安定入居が見込めるため、地方銀行・信用金庫等では地域への政策投資として融資ランクが高くなります。

新制度への関心が強い医療法人や社会福祉法人

2月から始まった政府の「税と社会保障の検討会」では、15兆円の高齢者医療費と7兆円の介護給付の財源確保と大幅見直しの議論が活発になっています。そんな中、病院は在院日数の短縮に伴う在宅医療の受け皿として、診療所は患者の囲い込みを目的に、高齢者住宅の併設に動き出ています。また、特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人は、全国32万人の特養待機者の受け皿と在宅介護事業の安定経営のために、自前整備でなく建て貸しの事業として高齢者住宅事業に積極的に参入しています。すでに国土交通省の2009年(平成21年)、2010年(平成22年)の補助対象事業者のうち、社会福祉法人やNPO等の公益法人が4割を占めます。介護保険事業の前途が財源問題で曇る中、費用設定を役所に縛られず運営できる「サービス付き高齢者向け住宅」は、医療・介護事業者の大きな関心を集めています。

国交省の成長戦略目標今年度3万戸、15年で60万戸

2020年までの10年間で、高齢者単身世帯・夫婦世帯が約245万世帯増加すると見込まれる中、国土交通省は今後15年間で60万戸の「サービス付き高齢者向け住宅」の整備をめざすとしています。

「急増する高齢者向けの“安心”で“自立可能”な住まいの確保」は、昨年度から国土交通省の国家成長戦略の一つの柱として位置づけられ、高齢者の住み替えによる地域の活性化と新たな雇用の確保も期待されています。東日本大震災の被災地では、制度を前倒しにした「仮設サービス付き高齢者向け住宅」の構想も、厚生労働省の地域包括ケアシステムの導入と併用して実施される見通し。また、全国JA農協や漁協組合に対しても、地域経済活性化と雇用安定化をめざして積極的に推奨する意向です

このように高齢者向け賃貸住宅市場は、今大きな展開を見せはじめています。

登録の要件 支援措置
住宅
  • 原則25u以上 (共同利用の居間・食堂・台所等が十分な面積を有する場合は18u以上)
  • 原則、台所・水洗便所・収納設備・浴室の設置
  • 原則3点以上のバリアフリー化  (手すりの設置、段差の解消、廊下幅の確保)
補助
  • 高齢者住宅:新築補助率10%(1戸あたり最大100万円)
  • 高齢者生活支援施設:新築補助率10%(1施設あたり最大1,000万円)
サービス
  • 次のいずれかの者が常駐することにより、緊急通報及び安否確認サービスの体制があること(社会福祉法人、医療法人、居宅介護サービス事業者の職員等)
税制
  • 所得税・法人税に係る割増償却
  • 固定資産税の減額
  • 不動産取得税の軽減措置
その他
  • 賃貸借方式、またはこれに準じた契約とすること
  • 前払家賃等を受領する場合の返還ルール及び保全措置の実施
融資
  • 住宅金融支援機構の融資要件を緩和
  • 家賃の前払金への民間金融機関の死亡時一括償却型融資(リバースモーゲージ)に対し、住宅金融支援機構の融資保険対象とする

※「高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律(改正 高齢者住まい法)」は、2011年(平成23年)4月28日に公布されました。公布日から6ヵ月以内に施行されます。

※本文の内容は、2011年(平成23年)5月10日時点の公表資料に基づいています



プロフィール

今瀬 俊彦氏 近影

今瀬 俊彦(いませ としひこ)

1979年(昭和54年)、旧厚生省入省。鶴巻温泉病院法人本部経営企画室長を経て、関西電力・東京電力にて有料老人ホームの開設などを手がける。2005年(平成17年)に(株)今瀬ヘルスコンサルティング設立。幅広いコンサルティング活動を行うとともに、国土交通省の高齢者等居住安定化推進事業のモデル事業として高専賃7カ所を展開。小規模多機能「絆(きずな)」副代表。講演、著書多数。

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