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遺産分割の実態と争いを避けるための対策

法律

弁護士 宮崎 裕二

このコラムの内容は、2016年(平成28年)8月現在のものです。

被相続人が遺言を残さずに相続が発生した場合、遺産は相続人全員の共有財産となります。その共有財産を、相続人全員の話し合いによって各相続人に分配することを「遺産分割」といいます。
遺産分割の話し合いは大変ですから、私たち弁護士は遺言を作成するなどの対策をしておくことをおすすめしますが、「うちに限って揉めるはずがない」という方も少なくありません。
しかし、本当にそうでしょうか。
今回は、遺産分割の話し合いが難しい現実と、家族の争いを避けるための事前対策についてご紹介します。

相続人による遺産分割の話し合いは、なぜ揉めやすいのか

高齢の親御さんがお子さん達から遺言の作成を懇願され、ごいっしょに私の事務所に来られることがあります。ところが、ご本人は「うちに限って揉めるはずがない」と言い張って、なかなか遺言の作成に応じてくれないというケースが少なからずあります。

その際に私が申し上げることは、「今は仲の良い兄弟姉妹であっても、肝心のあなたは相続のときにいないのだから、揉めないという保証はありません。お子さん達にはそれぞれ配偶者という応援団が控えています。また、同じ相続人でも親の世話をした人としなかった人との意識の差はとても大きいものです。お金持ちだから権利を主張しないというのは幻想です」などなど。

それに加え、相続人の事情で遺産分割の話し合いに手間・暇がかかるケースもあります。外国にいる相続人の場合には、在留証明とサイン証明が必要で、そう簡単には取れません。認知症等の病気で話し合いをする能力に疑問がある場合には、家庭裁判所に成年後見人の選任の申し立てをする必要があります。

また、相続の話し合いのタイミングを間違えると、泥沼化することがあります。早すぎてはいけません。特にお通夜の席で話をすることは厳禁で、せめて四十九日まで待つことです。反対に、遅すぎてもいけません。相続税の申告納付期限ぎりぎりに話し合いをすると余裕がなくなり、例えば相続税の納税のために不動産を売却するような場合、足元を見られて大幅に譲歩しなければならなくなります。


公正証書遺言のメリットと作成で注意すべきポイント

このように遺産分割の話し合いは大変ですから、遺言をおすすめするのです。きちんとした遺言を作成すれば、遺産分割の話し合いが不要ですし、お世話になった相続人以外の方に相続財産の一部を渡すこともできます。

遺言の仕方としては、公正証書遺言と自筆証書遺言がありますが、以下のような理由から公正証書遺言をおすすめします。

  1. 公証人が作るので形式的に無効となる可能性が低い。
  2. 内容についても公証人の一応のチェックが入り、偽造と疑われることも少ない。
  3. 遺言能力が推定される。
  4. 紛失しても公証人役場に長期間原本が保存され、他の公証人役場でも調査可能。

もっとも最近は公正証書遺言でも、認知症などを理由に遺言能力がないとして無効を争ったり、替え玉であるとして偽造を主張するケースがあります。公正証書遺言を作成する際に医師の診断書や当日のビデオ等を取って、遺言能力があり、偽造でないことの証拠作りをすることも必要です。

遺言に書く内容の注意点は次の通りです。

  1. 各財産を誰に渡すかを具体的に明記し、割合では書かない。(共有にすると共同管理でもめて共有  物分割訴訟になる場合がある)
  2. プラス財産だけでなく、借金等のマイナス財産も書く。
  3. 祭祀(葬儀)の主催者を指定する。
  4. 遺言執行者を指定する。

ただし、全財産を一人に渡すというような一方的な遺言は、遺留分による減殺請求を招き、かえって紛争を長期化させることになりかねませんのでご注意ください。


認知症などのリスクをカバーする信託を活用した相続対策

相続紛争対策は遺言だけではありません。最近、注目を集めている方法に「信託」があります。信託とは、財産(信託財産)を所有するA(委託者)が、B(受託者)に財産の所有権を一定期間移転することにより財産の管理・処分を任せ、C(受益者)のために信託財産から生まれる家賃などの収益の帰属や信託財産の引き渡しを確保することです。

一般的には、右図の事例のように、AがBと信託契約を結び、Aが生前中の第1次受益者をA自身とし、Aが亡くなった場合にはAの相続人の1人のCを第2次受益者とします。Aの死亡により信託財産がCに事実上移転するので、遺言とよく似ているわけです。

この制度の良い点は、Aが認知症になったとしても、その前に財産の所有権がBに移転しているので、成年後見人の選任の申し立てをするまでもなく、その収益が生前中はAに確保されることです。そして、Aの死後は収益がCに帰属し、信託期間が終了すると、信託財産そのものがCに引き渡されることになります。信託の活用も一度検討されてはいかがでしょうか。

信託の活用事例



プロフィール

宮崎 裕二 近影

宮崎 裕二(みやざき ゆうじ)

1979年東京大学法学部卒。同年司法試験に合格し、1982年弁護士登録。1986年に宮崎法律事務所開設。2008年度に大阪弁護士会副会長、2009年から現在に至るまで大阪地方裁判所調停委員を務める。専門は、不動産・事業再生・相続・企業法務。著書に『わかりやすい借地借家法のポイント』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、『借家の立退きQ&A 74』(住宅新報社)、共著に『不動産取引における心理的瑕疵の裁判例と評価』『土壌汚染をめぐる重要裁判例と実務対策』(いずれもプログレス)等多数。

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