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成功事例に学ぶ賃貸住宅建て替え最新知識

法律

弁護士 / 桝井 眞二

このコラムの内容は、2014年(平成26年)5月現在のものです。

首都圏直下地震、東海・東南海地震、南海地震など、日本列島の各地で近い将来、大地震が発生する確率がきわめて高い、と報道されています。
賃貸住宅オーナーの皆さんの中には、所有されている物件の耐震性について不安を感じている方や建て替えの必要に迫られている方もおられるのではないでしょうか。
そこで今回は、建物の耐震性不足などを理由に賃貸住宅の明け渡しに成功した事例について、いくつかご紹介したいと思います。

賃貸住宅の耐震性不足を「正当事由」と認めた裁判例

賃貸借契約を終了させる場合、賃借人(借主)に一定期間以上の賃料不払い、借家の又貸し、用途違反行為、無断増改築といった契約違反があるときは、それを理由に契約解除ができます。しかし、賃借人に契約違反がないときは、借地借家法に照らし、明け渡し請求を正当化できるだけの理由、つまり「正当事由」が必要となります。

問題は、建物の耐震性不足が「正当事由」にあたるか、ということです。
これについては、2013年3月28日の東京地方裁判所の判決結果が、報道でも取り上げられています。

裁判の概要は、都市再生機構(UR)が東京都日野市に所有する鉄筋コンクリート11階建の建物が、築30年以上経過しており、現行の耐震基準を大きく下回っていること等を理由に、URが賃借人に対して明け渡しを求めていたものです。賃貸住宅の耐震性不足が、借地借家法に定める「正当事由」にあたるか、が争点となっていました。

裁判所は判決で、耐震性不足が「正当事由」にあたることを正面から認め、賃借人に対して明け渡しを命じています。

明け渡しの成功事例1 耐震診断の判定を有効に活用

木造住宅耐震診断の総合評価 老朽化した木造アパートや貸家の耐震診断を実施したところ、総合評価の評点が「0.7」をはるかに下回り、「倒壊する可能性が高い」との診断結果が出たケースはよくあります。
このような耐震診断の結果に基づき、オーナーさまの依頼により私が代理人となって明け渡しの裁判を起こした事例でも、耐震診断の判定が「正当事由」にあたることを前提に、家賃の7〜10カ月分程度の立ち退き料の支払いと引き換えに、明け渡しが認められたケースがほとんどです。
行政が耐震診断に補助をしてくれる地域もありますので、所有物件の耐震性に不安がある方は、耐震診断を有効に活用し、明け渡しを求めていくのがよいでしょう。

評点 判定
1.5以上 倒壊しない
1.0〜1.5未満 いちおう倒壊しない
0.7〜1.0未満 倒壊する可能性がある
0.7未満 倒壊する可能性が高い

明け渡しの成功事例2 軟弱地盤に建つ賃貸併用住宅

建物そのものの耐震性の問題ではありませんでしたが、やはり地震がらみで明け渡しを実現した事例として、軟弱地盤のケースもありました。

東日本大震災の際、東京都内にある3階建の賃貸併用住宅(1階が賃貸、2階-3階が自宅)が異常なほど大きく揺れ、ドアが開閉できなくなるなどの損傷を受けました。オーナーさまが心配になって調査をしたところ、敷地の地盤が軟弱なことが原因で、地盤改良工事を実施した上で基礎も堅固なものとしなければ、震災時にきわめて危険であることが判明したのです。

そこで、私が代理人となり、建て替えの必要があることを理由に明け渡しの裁判を起こした結果、家賃の8ヶ月分程度の立ち退き料で賃借人も納得し、明け渡しが実現しました。

建物本体の耐震診断だけでなく、場合によっては敷地の地盤調査の実施も含め、多角的に検討していただいた方がよいでしょう。

明け渡しの成功事例3 震災時の防災対策を重視

珍しいケースとしては、行政が震災時の防災対策として、老朽家屋の解体を行政指導していた建物の明け渡し裁判を扱ったこともあります。

道路は、救急救命活動や各種物資の輸送のための緊急輸送路としても、また、震災時の火災の延焼を防ぐための延焼遮断帯としても、防災上の重要な役割を担っています。

主要な道路に面して建っている老朽家屋が、震災時に倒壊して道路をふさいでしまったりすると、緊急輸送の妨げとなるばかりか、延焼の拡大を招きかねません。そこで、行政が主要道路に面する築約40年の老朽家屋に対し、解体を促進するよう行政指導をしていたという事例です。

このケースでは、建物の老朽化の他に、このような行政指導を受けているという事実も「正当事由」の一要素として主張し、明け渡しが実現されました。 

住宅密集地を大地震がおそった場合、建物の倒壊だけでなく、火災による死傷者が多数にのぼることが懸念されています。「正当事由」を、防災対策という側面から補強するという発想も、今後は必要になってくるように思われます。

阪神・淡路大震災では、住宅・建築物の倒壊による大きな被害が発生しました。政府は「新成長戦略」および「住生活基本計画」において、住宅の耐震化率を2020年までに95%とする新たな目標を定め、建築物に対する指導等の強化や計画的な耐震化の促進を図っています。



プロフィール

桝井 眞二氏 近影

桝井 眞二(ますい しんじ)

大学4年在学中に司法試験合格。1982年(昭和57年)、東京弁護士会に弁護士登録。現在、新麹町法律事務所(弁護士26名)所長(共同経営者)。不動産関係、相続、一般民事、大型刑事事件などを手掛ける。著書に「やさしい法律相談」共著(鳳書院)、「失敗しないアパート経営と管理」共著(NE賃貸住宅研究所)などがある。

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