賃貸住宅経営・土地活用 TOP > 役立つ専門家コラム TOP > 法律(2013年3月号)成年後見制度を活用した問題解決の事例

成年後見制度を活用した問題解決の事例

法律

弁護士 / 桝井 眞二

このコラムの内容は、2013年(平成25年)3月現在のものです。

資産活用にも有効な成年後見制度

最近、認知症などで判断能力が低下した高齢者を狙った悪質な商法や犯罪が多発しています。こうした被害を防止する上でも、注目を集めているのが成年後見制度です。

成年後見制度は、認知症や知的障害などの理由で判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度で、民法が定めている法定後見制度と、任意の契約による任意後見制度に分かれます。さらに法定後見制度には、本人の心身の状態に応じて、後見・保佐・補助の3つのレベルがあります。

本人が完全な植物状態にある、家族の名前といったごく日常的な事柄もわからなくなっているなど、最も重い状態にある場合に認められるのが後見です。それに対して、重要な財産行為を自分でもできるかもしれないが、適切にできるか心配であるような場合など、もっとも軽い状態の方に認められるのが補助です。その中間の状態の場合は、保佐が認められます。

この制度を利用するには、まず本人もしくは家族等から、本人の住所地の家庭裁判所に対して申立てをする必要があります。家庭裁判所は、医師に対して本人の状況を確認するなどした上で、後見・保佐・補助のいずれにするかを決定します。

家庭裁判所が選任した成年後見人は、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことができます。

したがって、成年後見制度をうまく活用することは、高齢者の資産活用を図る上でも、重要となっています。今回は実際のご相談事例をもとに、成年後見制度の活用法をご紹介します。

法定後見の開始までの流れ

申立て

本人、配偶者、四親等内の親族などが、本人の住所地の家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てます。

家庭裁判所

審理
本人の状況確認や後見人等の適格性の調査などを行います。
審判
後見を開始するか、後見人等を誰にするかを裁判官が判断します。

審判の確定 法定後見の開始

親族や法律・福祉の専門家などが成年後見人等(後見人・保佐人・補助人)に選任されます。

法定後見制度で問題解決(1) 父親の土地に賃貸住宅を建築

Aさん(50歳)は、父親(80歳)が所有している土地に、自分名義で賃貸住宅を建てることを計画しました。

建築の請負契約や金融機関からの建築資金の融資は、Aさんが契約するので問題ありませんが、融資を受けるには新築する建物だけでなく、敷地も担保(抵当権設定)に入れなければなりません。

しかし、父親が認知症で寝た切りの状態にあるため、金融機関の審査をパスできず、「このままでは融資が受けられないので建築計画を断念せざるを得ない」というケースでご相談がありました。

このような場合、父親に成年後見人を付ければ、後見人には父親の財産を全面的に管理する権利や代理権などが与えられます。したがって、抵当権設定契約を父親に代わって行うことができ、融資を受けることが可能になります。ご相談のケースでも、家庭裁判所に後見人を選任してもらうことによって、計画どおり無事に賃貸住宅を建築することができました。

法定後見制度で問題解決(2) バリアフリー住宅に建て替え

お子さん達から、「母親(75歳)が自宅の土地・建物を所有しているが、老朽化しており介護にも不便なため、取り壊してバリアフリー住宅に建て替えたい」というご相談がありました。

このように居住用の土地・建物を解体、新築するような場合には、後見人が了解するだけでなく、家庭裁判所の許可を受けなければならないとされています。

このケースでは、介護のために建て替える必要性があることや、建て替え後に賃貸併用住宅にし、そこから上がる賃料収入を母親の医療・介護費用に充てる必要性があることを説明することで、裁判所の許可を取ることができました。

任意後見制度の活用など将来に備えた対策

任意後見制度とは、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備え、ご本人がしっかりしている間に自分の意思で後見人となるべき人(これを任意後見受任者と言います)を選び、あらかじめ代理権を与える契約を公正証書で結んでおくというものです。

頼れる身寄りがいない方の場合は、任意後見制度を利用して、判断能力が低下した後の自分の生活や療養看護、財産管理の契約などに関して、備えをしておいた方が安心です。

また、身寄りがいる場合も、ご本人が認知症などになった場合、家族が財産をめぐって争うことが予想されるようなケースでは、その防止策として、公正な第三者を任意後見受任者に指名して財産の管理を委ねた方がよい場合もあります。

人生90年と言われる時代、成年後見制度を賢く利用して、安心できる老後のくらしを実現してください。



プロフィール

桝井 眞二氏 近影

桝井 眞二(ますい しんじ)

大学4年在学中に司法試験合格。1982年(昭和57年)、東京弁護士会に弁護士登録。現在、新麹町法律事務所(弁護士26名)所長(共同経営者)。不動産関係、相続、一般民事、大型刑事事件などを手掛ける。著書に「やさしい法律相談」共著(鳳書院)、「失敗しないアパート経営と管理」共著(NE賃貸住宅研究所)などがある。

新・土地オーナーサポートシステム NEOS
資料請求はこちら
土地活用のご相談はこちら
事業計画提案(無料をご希望の方はこちら
ページの先頭に戻る