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明け渡しの法律知識と実務

法律

弁護士 / 桝井 眞二

このコラムの内容は、2010年(平成22年)5月現在のものです。

賃貸住宅を建て替えるには、現在の入居者に部屋を明け渡してもらう必要がありますが、その場合の正しい対応策がわからずに悩んでおられる方が多いようです。今回は、明け渡しを求める時にとるべき手続きと、トラブルを避ける方策についてご説明しましょう。

契約違反がある入居者の場合は「契約解除」

家賃の不払いや借家の又貸し(無断転貸)、用法違反(禁止されているペット飼育など)等の契約違反をしている入居者に対しては、賃貸借契約を解除して明け渡しを求めていくことになります。この場合、立退料の支払いは不要です。

契約解除にあたって重要なのは、タイミングを逃さないことです。たとえば家賃不払いの場合、過去にどれほど滞納があっても、解除が成立する前に滞納家賃が支払われてしまうと、それを理由に解除をすることはできなくなります。したがって、明け渡しを実現したいのであれば、滞納が解消される前に解除の通知をすることが必要です。

ただし、解除に先立って催告(滞納家賃を支払うよう催促すること)をしておかないと、解除が無効とされてしまう危険性があります。すでに催告をしてあれば問題ないのですが、そうでない場合は、まず催告をした上で解除をしたほうが万全です。
もっとも、催告と解除の通知を別々にしなくても、次のように1通の通知で同時に行うことが可能です。その場合、内容証明郵便(配達証明付)で通知しておいたほうがいいでしょう。

催告と解除の通知例

「滞納家賃○○円を本通知が届いた後、○日以内にお支払いください。期限内にお支払いのない場合には、本通知をもって契約を解除することを、予め通知します。」

契約違反のない入居者にはこう対応する

契約違反のない入居者に明け渡しを求めるには、
(1)期間の定めのない契約の場合には「解約の申し入れ」
(2)期間の定めのある契約の場合には「更新拒絶の通知」
をする必要があります。

期間の定めとは、たとえば2年契約などのように契約期間が合意されていることを言います。多くの契約では期間の定めがあると思われますが、たとえば家賃の値上げで揉めて契約更新の合意ができなかったような場合は、その後は期間の定めのない契約になります。

(1)の「解約の申し入れ」は、いつしてもかまいませんが、契約終了はそれから6カ月経過後になります。(2)の「更新拒絶の通知」は、出すべき時期が決められており、契約期間満了の6カ月以上前から1年以内の時期に、以降の契約更新を拒絶することを前もって通知しておく必要があります。(図表の例を参照)

(2)でうっかりして6カ月以上前に通知を出しそびれた場合、もはや更新拒絶の通知はできませんが、では必ず契約を更新しなければならないのかと言うと、そうではありません。図表の例の場合なら、12月31日を過ぎて(契約の合意更新をしないまま)翌年の1月1日になると、この契約は期間の定めのない契約に切り替わります。そうなると、(1)で説明したとおり、いつでも解約の申し入れができますので、1月1日に解約申し入れをすれば、6カ月経過後に契約を終了させることができます。

明け渡しの合意ができた場合の対処法

もっとも、家主と入居者が話し合いをして明け渡しの合意がまとまるのであれば、その時期はいつでもかまいませんので、思い立ったらまず明け渡しの申し入れをしてみることも大切です。たとえば、期間満了までまだ1年半ある時期であっても、入居者が明け渡しを納得すれば、合意していっこうにかまわないわけです。

そして、合意がまとまった場合には、「明け渡すと言った、言わない」の水掛け論にならないように、次の文例のようにきちんと書面化しておくことが重要です。

明け渡しに合意した場合の文例

「家主甲と入居者乙は、本件建物の賃貸借契約を本日合意解除する。甲は乙に対して平成○年○月○日まで本件建物の明け渡しを猶予し、乙は同期限までに本件建物を明け渡す。乙は、本合意成立後明け渡しまでの間、賃料相当損害金として月額○○円の割合による金員を甲に持参して支払う。」

書面化する場合には、必ず「合意解除」という表現を使い、間違っても「平成○年○月○日以降は契約を更新しない」といった表現を使ってはなりません。後者の表現では、借主に不利な一定の特約は無効となるという借地借家法の条文に抵触して、せっかくの合意が無効となる危険性があるので注意が必要です。



プロフィール

桝井 眞二氏 近影

桝井 眞二(ますい しんじ)

大学4年在学中に司法試験合格。1982年(昭和57年)、東京弁護士会に弁護士登録。現在、新麹町法律事務所(弁護士26名)所長(共同経営者)。不動産関係、相続、一般民事、大型刑事事件などを手掛ける。著書に「やさしい法律相談」共著(鳳書院)、「失敗しないアパート経営と管理」共著(NE賃貸住宅研究所)などがある。

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