賃貸住宅経営・土地活用 TOP > 役立つ専門家コラム TOP > 法律(2010年3月号)オーナーの権利を守る特約条項

オーナーの権利を守る特約条項

法律

弁護士 / 桝井 眞二

このコラムの内容は、2010年(平成22年)3月のものに、2011年(平成23年)11月に加筆修正したものです。

入居者と賃貸借契約を締結する際、市販の契約書用紙を使用する方は少なくありません。市販の契約書にも基本的な条項は記載されていますが、今回はよくご相談いただく事例をもとに、特約条項として契約書に盛り込んでおいたほうがよいポイントをいくつかご説明します。

更新料の取り決めに関する条項のポイント

首都圏や関西の京都などでは、賃貸借契約を更新する際に、家賃とは別に一時金(更新料)を支払う商慣習があります。しかし、契約書に更新料支払いの約定がなければ、更新料の支払い義務はないとするのが最高裁判所の見解ですので、契約締結の場合には必ず、「更新の際には、賃借人は賃貸人に対して、賃料1カ月分の更新料を支払わなければならない」などといった条項を設ける必要があります。

もっとも最近の裁判例では、契約書にこのような条項が置かれているのに、更新料の支払い義務を否定した判決も出ています。しかし、その後に同じ裁判所から、更新料の支払い義務を肯定する判決が出されるなど、裁判の動向もまだ流動的でしたが2011年(平成23年)7月、最高裁判決で有効とされ、決着がつきました。

なお、上記の条項では、更新料の支払い義務があるのが、合意で契約を更新した場合(合意更新)だけか、契約期間満了に伴い自動的に契約が更新された場合(法定更新)も含むのかが不明確ですので、冒頭を「更新の際(法定更新の場合も含む)には…」と明記しておくほうがベターです。

主な更新料裁判の判決

更新料は有効か、無効か?

2005年(平成17年)10月東京地裁有効
2008年(平成20年)1月京都地裁有効
2009年(平成21年)3月大津地裁有効
2009年(平成21年)7月京都地裁無効
2009年(平成21年)8月大阪高裁無効
2009年(平成21年)9月京都地裁無効
2009年(平成21年)10月大阪高裁有効
2010年(平成22年)2月京都地裁無効
2011年(平成23年)7月最高裁有効

過去の裁判の判決は、このようになっています。

家賃の自動値上げを契約に盛り込む場合

市販の契約書では、近隣の相場に比べて家賃が不相当となった場合などに、賃貸人は家賃の値上げを請求できるという条項が設けられています。しかし、賃借人が値上げに応じなかったり、あるいは値上げ幅をめぐって交渉がまとまらず、家賃が供託されてしまうケースがしばしばです。

借地借家法は、簡易迅速な解決のために、まず調停を起こして話し合うという制度を採用していますが、調停を起こすにも手間ひまが掛かりますし、話し合いがまとまらなければ裁判を起こさなければなりません。そこで当初の契約の時点で、将来更新する場合に備え、「契約を更新する場合(法定更新の場合も含む)、更新後の家賃は更新前の家賃の1.03倍とする(3%の値上げ)」などという、家賃の自動値上げの特約を記載しておくことが考えられます。

ただ、このような取り決めには賃貸人側も拘束され、それ以上の値上げを要求することが難しくなります。逆に、あまりに高率な値上げを取り決めますと、非常識であるとして後で取り決めが無効とされる場合がありますので注意が必要です。

まとめ

賃借人の行方不明と契約解除について

入居者が長期にわたって借りている部屋を留守にし、家賃を滞納した上に連絡もつかないような場合、市販の契約書でも、「賃借人が行方不明になった場合には契約を解除できる」という条項が設けられていることがあります。しかし、解除をするためにはその旨を記した通知(通常は内容証明郵便)が賃借人に届くことが必要ですので、行方不明の場合には解除ができないという事態になりかねません(公示送達※という方法をとらなければならなくなります)。

そこで、このような場合に備えて、「賃借人が本件建物に〇カ月以上居住せず、かつ家賃も滞納した場合には、何らの催告や解除の意思表示を要することなく、賃貸借契約は当然に解除される」というような条項を設けておくことが考えられます。

※公示送達(こうじそうたつ)とは、入居者の住居所が不明の場合、送り届けなければならない訴訟上の書類をいつでも交付する旨を、一定期間、裁判所の掲示板に掲示することによって送達の効力が生じたものとする制度。

まとめ

契約解除後に役立つ「遅延損害金」の約定

契約を解除したにもかかわらず賃借人が立ち退きに応じてくれない場合、最終的には裁判を起こして判決をとり、強制執行をしなければならなくなります。手間ひまも掛かりますし、裁判費用もばかになりませんので、賃借人が自発的に立ち退いていくような工夫が必要です。

契約解除後、賃借人は家賃ではなく、「遅延損害金」というものを賃貸人に支払わなければなりません。しかし、この遅延損害金の額は家賃と同額が基本のため、賃借人は立ち退きに応じなくても家賃と同じ額を支払えばよいこととなり、痛くも痒くもないということになります。このような事態を防ぐには、「契約終了後、明け渡し完了までの間の遅延損害金は、家賃の倍額とする」というような特約条項を設けておくことが考えられます。

これにより、賃借人は早く立ち退かなければ損をすることとなりますので、自発的に立ち退いてくれるケースが多くなると思われます。

まとめ



プロフィール

桝井 眞二氏 近影

桝井 眞二(ますい しんじ)

大学4年在学中に司法試験合格。1982年(昭和57年)、東京弁護士会に弁護士登録。現在、新麹町法律事務所(弁護士26名)所長(共同経営者)。不動産関係、相続、一般民事、大型刑事事件などを手掛ける。著書に「やさしい法律相談」共著(鳳書院)、「失敗しないアパート経営と管理」共著(NE賃貸住宅研究所)などがある。

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