法律120年ぶりの民法改正と賃貸住宅経営への影響

弁護士宮崎 裕二PROFILE

このコラムの内容は、2017年(平成29年)10月現在のものです。

「民法」は、市民生活の基本的なルールを定める最も身近な法律です。その民法が、契約に関する部分を中心に2017年(平成29年)5月26日に大改正されました。実に120年ぶりとなる改正の目的は2つあり、この間の社会・経済の変化に対応することと、国民一般にわかりやすいものとすること。改正民法が施行されるのは、一定の周知期間を経た3年後となる予定です。
では、賃貸住宅オーナーの皆さんにとって、今回の民法改正はどのような影響があるのでしょうか。主要な改正点をご紹介します。

1.民法大改正の要点をピックアップ

今回の民法改正は多岐にわたり、多くの改正がなされていますが、その中でも要点として挙げられるものをいくつかピックアップして紹介します。

(1)消滅時効の期間を統一
飲み屋のつけが1年、売掛金が2年、工事代金が3年などといった、これまでは時効になる期間がバラバラだった短期消滅時効制度を廃止。債権を行使することができることを知った時から5年、または債権を行使することができる時から10年※と、時効によって債権が消滅する期間が統一されました(166条)。
※ただし、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の場合は20年(167条)。
(2)保証人の保護を強化
いわゆる連帯保証人制度における個人保証の保護が強化されました。2004年(平成16年)の改正で貸金等の債務に関し極度額(限度額のこと)を明記するなどの規制がなされましたが、今回の民法改正では貸金等債務の公正証書作成義務(465条の6)や貸金等債務以外の債務についても極度額の明記(465条の2)など、規制の強化・拡大がなされました。
(3)定款約款の規定が新設
インターネット通販など、不特定多数の消費者と画一的な取引をする場合に、事業者が示す「約款」の規定が新たに設けられました(548条の2ないし4)。消費者の利益を一方的に害する条項は無効になります。長文で細かい約款をほとんど読まずに契約したことによるトラブルで、泣き寝入りするケースを減らす狙いがあります。
(4)契約不適合責任へ改正
売主の責任について、これまで「瑕疵担保責任」といわれていたものを、「契約不適合責任」としました(565条)。「瑕疵」という現在ではあまり使われない用語では何をもって瑕疵というのかあいまいであるのに対して、「契約不適合」であれば契約内容に合っているかどうかが問題となるので、より明確になると考えられたものです。

2.賃貸住宅経営で知っておきたい賃貸借の主要な改正点

今回の民法改正が、賃貸住宅経営の実務に根本的な影響を与えることはないと思われます。というのも、賃貸借に関する改正は、これまでの裁判例を踏まえた条文の改正か追加がほとんどだからです。しかし、賃貸借の主要な改正点を知ることで、賃貸住宅オーナーとして知っておきたい法律関係を再確認することができます。

(1)賃貸人(貸主)の地位の移転
賃貸住宅を譲渡すると、賃貸人の地位も当然に譲受人に移転され、これに伴い敷金の返還債務や修繕費用等の返還債務も譲受人に承継されることが明記されました(605条の2)。
(2)賃借人(借主)の妨害排除請求権
賃貸住宅の引き渡しを受けた賃借人は、第三者にその使用を妨害されたときに、自ら妨害の停止や返還を請求することが認められました(605条の4)。
(3)賃貸人の修繕義務の範囲、賃借人の修繕権
賃借人の責任で修繕が必要となったときには、賃貸人は修繕義務を負わないことが明記されました(606条)。同時に、賃貸人が修繕義務を怠っている場合や急ぐ場合には、賃借人自ら修繕することが認められました(607条の2)。
(4)賃貸物が一部使用不可の場合
賃借人の責任によらずに住宅の一部が使用できなくなった場合には、賃借人が請求するまでもなく、当然に賃料が減額されることになりました(611条)。
(5)サブリースなど転貸借の場合
サブリース等で転貸をしている場合には、転借人は転貸人だけでなく、賃貸人に対しても直接賃料支払等の義務を負います(図1参照)。一方、図2のように賃貸人と転貸人との間の賃貸借契約が合意解除されても、賃貸人は転借人に対し明渡しを求められませんが、賃借人の賃料不払い等で賃貸人が解除権を有しているときには、転借人に明け渡しを求めることができます(613条)。

図1:サブリース等で転貸をしている場合には、転借人は転貸人だけでなく、賃貸人に対しても直接賃料支払等の義務を負います。図2:賃貸人と転貸人との間の賃貸借契約が合意解除されても、賃貸人は転借人に対し明渡しを求められませんが、賃借人の賃料不払い等で賃貸人が解除権を有しているときには、転借人に明け渡しを求めることができます(613条)。

(6)賃貸人(貸主)の損害賠償請求権
賃借人の用法違反による損害賠償請求権は、返還を受けた時から1年間は時効が完成しません(622条、600条)。
(7)敷金の定義と扱い
「名目を問わず賃借人の債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭」と敷金の定義が明記されました。よって、賃借人の未払い債務がある場合に賃貸人は敷金を充当できますが、逆に賃借人は賃貸人に対して充当を請求できません(622条の2)。

弁護士宮崎 裕二(みやざき ゆうじ)

宮崎 裕二氏 近影

1979年東京大学法学部卒。同年司法試験に合格し、1982年弁護士登録。1986年に宮崎法律事務所開設。2008年度に大阪弁護士会副会長、2009年から現在に至るまで大阪地方裁判所調停委員を務める。専門は、不動産・事業再生・相続・企業法務。著書に『わかりやすい借地借家法のポイント』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、『借家の立退きQ&A 74』(住宅新報社)、共著に『不動産取引における心理的瑕疵の裁判例と評価』『土壌汚染をめぐる重要裁判例と実務対策』(いずれもプログレス)等多数。

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