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今回の税制改正(案)で、大幅な課税強化が予定される相続税。「相続税は一部の富裕層にかかるもので自分には関係ない」という発想は、過去のものとなるかもしれません。税理士で税務コンサルタントとしてもご活躍の奥村眞吾先生に、税制改正のポイントとその対策を聞きました。

※ 本コラムの内容は平成23年7月1日時点のものです。また、その内容は「平成23年度税制改正大綱」に基づいています。




相続財産から差し引いて税負担を軽減できる「基礎控除」は、バブル期の地価高騰による相続財産の価額上昇に対応して負担調整を行うために引き上げられてきました。その後、地価が下落してからも基礎控除の水準はそのままに据え置かれた結果、平成21年に亡くなった人のうち、相続税の課税対象となったのは約4%の4万6,000人あまりまで減少しました。また、過去において相続税の最高税率の引き下げを含む税率構造の緩和が行われてきた結果、相続税による「富の再分配」機能が低下してきています。
そこで「富の再分配」と「格差是正」を図るという理由から、平成23年度税制改正(案)は、昭和33年度に現行の相続税制が始まって以来、初めての大改正となる予定です。基礎控除の引き下げ、税率構造の見直し、さらには死亡保険金の非課税枠の縮小。つまりは、相続税の大幅増税です。
この中で、一般の方にとって影響が大きいのは、基礎控除の引き下げです。改正前の基礎控除は[5,000万円+1,000万円×法定相続人の数]。それが、改正後は[3,000万円+600万円×法定相続人の数]に縮小されます。
例えば法定相続人が3人の場合、改正前であれば8,000万円(5,000万円+1,000万円×3人)まで相続税はかかりませんでしたが、改正後は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)を超えると相続税がかかることになります。
相続税の対象となる相続財産には、不動産・現金・預金・株式などの他、生命保険金も含まれます。地価の高い三大都市圏に一戸建てのマイホームを持ち、一部上場企業で定年まで働いたような場合、家族に相続税がかかるケースは多くなるでしょう。妻の相続分は配偶者の軽減措置がありますが、子どもが相続する場合は、基礎控除引き下げの影響をまともに受けることになります。いわんや、自宅の他に不動産を持っている方や、実家の不動産などを相続する予定の方は、真剣に相続対策に取り組まないと大変なことになります。



昨年(平成22年度)の税制改正で、「小規模宅地の特例」の適用が大変厳しくなりました。小規模宅地の特例とは、居住用や事業用に使われていた宅地等を相続や遺贈で取得した場合、一定の要件のもとに通常の相続税評価額より80%または50%の割合で減額できるというものです。
以前は相続した人が相続発生後に居住や事業を継続しない場合でも、200uを上限として50%の減額を受けることができましたが、昨年の改正で非継続の場合は特例の適用対象から除外されました。
これにより、親子が離れて住んでいて相続後も子どもが実家に戻らないような場合などでは、減額が受けられなくなってしまったのです。親が亡くなって子どもがそこに住むのであればいいですが、亡くなってから売るのであれば、今のうちに考えた方がいいでしょう。
例えば実家を賃貸住宅にしておけば、事業用として小規模宅地の特例が適用できます。また、土地は貸家建付地評価となり、建物は借家権割合が差し引かれますから、相続税評価額を大幅に減額できます。さらに相続後は毎年の固定資産税や都市計画税が安くなりますから、はるかに有利です。
皆さんは土地に対して何重に税金がかけられているかご存知ですか。持ち続けていれば固定資産税・都市計画税がかかり、子や孫に贈与すれば贈与税がかかり、亡くなったら相続税がかかります。かといって、売却すれば譲渡所得税を払わなければなりません。
だから、土地活用をおすすめするのです。子どもは東京で分譲マンションに住んでいる、親がひとりで大阪の持ち家に住んでいるという方に、「このままで大丈夫ですか、何の特例も受けられませんよ」というと、そんなに税金がかかるんですか、と驚かれます。小規模宅地の特例がこれだけ厳しくなった上に、今回の相続税の大幅増税です。都市に自宅や実家をお持ちの方は、真剣に土地資産活用を考える必要があります。

(株)奥村企画事務所代表取締役、奥村税務会計事務所所長、OKUMURA HOLDING INC(米国)代表。多数の企業・法人の会計顧問や税務コンサルタントとして活動するかたわら、日本経済新聞社やNHK文化センター講師をつとめ、国内はもちろん海外でも講演活動を行っている。『不動産と税金がよくわかる本』『税金が安くなる法』(PHP研究所)など著書多数。