このセミナーの内容は、2007年12月25日現在のものです。

景気の状況は上場企業の業績拡大や大幅な法人税の増収などから、好調だといわれてきましたが、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)などの影響で、景気は下り傾向です。持続的な発展のためには、自動車産業のような高い技術力を持つ産業が育つことと、任天堂のWii(ウィー)のような独創的な発想のソフト産業の発展が大切です。現在の景気状況と今後について、注目すべき事柄別に考察してみました。

(1) 上場企業の業績拡大が続いています。日本経済新聞社によれば2007年9月中間決算を集計したところ、連結経常利益は前年同期と比べて11.8%増の増益になっています。高い経済成長が続く新興国に事業の足場を持つ自動車や建設機械、海運、商社などが業績を伸ばし、個別企業でも、インドに強い自動車販売会社の経常利益が19%増と高い伸びを示していたり、別の企業では中国での建設機械販売が6割増加して47%の増益をあげるなどの実績が見られます。また、海運大手三社の経常利益は合計で3千億円と前年同期の2倍。油田や鉱山権益を持つ大手商社も軒並み中間最高益を更新しています。
(2) ここ数年、土地価格の上昇が続いています。実際の売買も順調で、私が立ち会った2007年の千葉県や神奈川県の売買では、路線価の2割から5割増で売買されている物件が多くありました。しかし、2006年のように、路線価の2倍〜5倍といった物件の立ち会いはありませんでした。ミニバブルの状況であった土地の上昇は一服して、今が「売り時」と考える人が多くなっています。
(3) オフィスは、ここ数年の空室率の改善により首都圏の空室率が5%を下回り、2%〜3%の地域が多くなっています。企業の業績拡大による旺盛なオフィス需要に支えられ、賃料が30%もの値上げとなっている大手のファンド物件も出ています。また、銀座ではアルマーニの直営店として「アルマーニ銀座タワー」が話題になっていますが、日本で最も売れる商業地である銀座は地価の高騰も賃料の上昇もまだ続いています。
(1) 景気の先行きについて、最大の不安定要素はサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)です。当初はサブプライムローンによる業績への影響は限定的といっていたアメリカ大手の金融機関でも、メリルリンチが89億ドル(約1兆円)、シティグループで110億ドル(約1.2兆円)など巨額の損失が明るみになり、2007年11月には、株価が一時1万5千円を下回るなど急落する場面がありました。また日本の金融機関は、そのような債権は購入していないから関係ないといっていたのに、大手の金融機関で1千億円を超える損失が発生し、信用金庫などの中小の金融機関でも損失の発生が懸念されるなど、不安定要素が拡大しています。
(2) 日本の景気の拡大は、中国やインドをはじめ、アジア諸国の経済発展とアメリカの好景気に支えられています。また為替相場も、2004年の11月中旬には103円の円高でしたが、2006年の11月中旬には117円の円安になり、輸出での利益は増加しました。しかし、2007年11月中旬には111円と円高になり、今後は輸出による利益が減少することが懸念されています。
(3) 建物の構造計算の不正を防止するために建築基準法が改正された影響で、建物の確認申請が40%近くも減少しました。建物の完成がいつになるか分からず、資金繰りに困る建設業者が多数出る恐れがあります。
(4) さらに、原油高をはじめ資源の高騰でインフレの懸念も出てきています。不景気の物価高という最悪の事態は避けたいものです。
(1) 自動車、造船、鉄鋼、電気などの産業が経済発展の原動力になっています。このうち自動車のように国外で生産を積極的に行って、他国より高い技術力に裏打ちされ、高い競争力を持っている産業であれば、今後の発展も大いに期待できると思います。家電の分野、ナノテックの分野、先端医療産業などの次世代産業を含め、その他の分野でも自動車産業のように戦略的な投資が必要です。
(2) サブプライムローンでは、アメリカの金融機関でも日本の土地バブルの時のような貸付をしていたことを知り、驚いた人も多かったのではないかと思います。しかし、日本の大手金融機関がサブプライムローンで多額の損失を被ったことも、また驚きです。日本の金融機関や機関投資家が、リスクの管理をどれだけしていたのか疑問視されています。やはり金融機関が自動車産業のように世界をリードして行く産業に育たないと、経済の持続的発展は難しいと思います。
(3) 「コンピューターの巨人IBMはハード中心からサービスソフトへ戦略を転換して、ソフト開発、コンサルティング、保守管理などのサービスの強化に努めて成功した」といわれています。日本ではIBMのようにソフトへの転換で成功を収めたコンピューター企業はありませんでしたが、任天堂のWii(ウィー)の成功は、ハード至上主義の日本の風土に一石を投じた独創的な発想だと思います。このような創造性とスキルを持った企業の活躍が、日本人でもソフトの時代を勝ち取ることができるとのヒントを与えたと思います。