このセミナーの内容は、2007年11月25日現在のものです。

借地においては、借地権の譲渡や転貸、新築や増改築、建物の種類や構造等の借地条件を変更しようとする場合に備えて、「借地非訟手続き」という制度が設けられています。この手続きを利用すれば、地主の反対にあっても借地上の建物の建て替え等が可能になります。

 借地において、以下のような行為を借地人がしようとする場合は、事前に地主の承諾を受けなければならないとされています。
(1) 借地権を他に譲渡したり、借地を第三者に使用させる(転貸する)場合
(2) 「増改築禁止特約」(地主の承諾を取った上でないと、増改築してはならないという約定)がある場合に、建物を増改築(新築を含む)する場合
(3) 建物の種類構造規模または用途を制限する借地条件(例えば、木造しか建ててはいけないとか、居住用の建物に限るといった取り決め)がある際に、それらを変更する場合
 このような場合に、地主がすんなり承諾してくれれば何の問題もありませんが、地主が承諾しない場合や、法外な承諾料を要求された場合に、地主のいいなりにならなければならないとすると、借地人は極めて不利な立場におかれます。
 そこで法律は、借地人から申立てがあれば、地主の承諾に代わって裁判所が借地権の譲渡等に対して許可を与えるという制度を設けました。それが「借地非訟手続き」です。
 では、どのような場合に、裁判所が地主の承諾に代わる許可を出してくれる(許可の要件)のでしょうか。前述(1)(2)(3)のケースを見てみましょう。
(1)のケース
第三者が譲渡転貸を受けても地主に不利となるおそれがない場合
(2)のケース
土地の通常の利用上、相当な新築増改築である場合
(3)のケース
付近の土地の利用状況の変化、その他の事情の変更により、建物の種類構造規模用途を変更することが相当である場合
 そして、裁判所は許可を出すにあたって、借地人に対して財産上の給付(金銭の支払い)を命じるのが通例です(許可の条件)。その金額は以下のようになります。
(1)のケース
借地権価格〔土地の時価(借地権がないと仮定して、土地を売却した場合の値段)の6〜7割前後〕の10%前後
(2)のケース
新築の場合で土地の時価(借地権がないと仮定して、土地を売却した場合の値段)の3%(ただし、床面積が増えたり、自宅用の建物を賃貸併用にして収益力がアップする場合などは、最高5%)、増改築の場合は、その規模に応じて1〜2%くらい
(3)のケース
ケースバイケースだが、建物の構造を「木造」から「軽量鉄骨造」に変更した場合について3%とした決定例がある
 なお、平成4年7月以前に契約された賃貸借の場合、非堅固建物(木造や軽量鉄骨造のもの。普通建物ともいいます)と堅固建物(重量鉄骨や鉄筋コンクリート造のもの等)の区別があります(同年8月1日以降に初めて設定される借地については、堅固非堅固の区別が廃止されました)が、非堅固建物しか建てられない条件の借地に堅固建物を建てようとする場合には、借地条件変更の借地非訟の申立てが必要とされます。その場合に裁判所が支払いを命じる金額は、土地の時価の10%くらいとなります。
 これらの借地非訟手続きは、土地の所在地を管轄する地方裁判所に対して、借地人が申立てをします。地主の承諾や裁判所の許可を得る前に、前述(1)(2)(3)のような行為をすると、借地契約を解除されてしまう危険性がありますので、必ず事前に申立てをする必要があります(もっとも、建物と借地権が競売された場合は、落札して取得し借地人となった後に申立てをすることになります)。裁判所が申立て用紙のひな形を作成していますので、それを利用すると便利でしょう。
 申立てがあると、裁判所は借地人地主双方の言い分を聞き、また、鑑定委員会(弁護士や不動産鑑定士等により構成されています)に財産上の給付の額をいくらとすべきか、土地の利用勝手がよくなるのに応じて地代を増額すべきか否か等について意見を聞いた上で、許可を出すかどうか、その条件をどうするかを決定します。申立てからおよそ8カ月程度で、決定が出る場合が多いようです。
 なお、建て替える建物の建築資金を借入れでまかなう場合、ほとんどの金融機関は地主の「担保差入承諾書」(借地人が建物に抵当権を設定することを承諾するといった内容のもの)を要求しますが、借地非訟手続きにおける裁判所の許可は、この地主の承諾書にまで代わるものではありません。許可の他に別途、承諾書が必要となることを認識しておきましょう。