このセミナーの内容は、2007年8月25日現在のものです。

地主さんにとって、借地権が設定されている土地(底地)は、一般的に地代の水準が低い上、相続ともなればそれなりに相続税がかかってくるため、大変頭の痛い存在です。「土地の半分を借地人に差し上げるので、残り半分を返してもらいたい」などと提案して、土地を取り戻して有効活用に結び付けた場合に、税金の取り扱いはどうなるのでしょうか。

 建物の所有を目的とする土地の賃借権などは「借地権」といわれ、その権利は手厚く保護されています。借地権と底地の交換をする場合には、まずその借地権がどのくらいの価額であるのかを評価して、借地権割合を算定することが最初のポイントです。実務上は国税庁の相続税路線価図を利用して、そこに示される借地権割合をそのまま利用してしまうケースも見かけますが、相続税路線価図の比率はあくまで相続税・贈与税の計算をする際に利用するものであり、借地権と底地を交換する場合にそのまま採用するのは適切ではありません。
 賃貸借を始める際に権利金の授受があったのかどうか、建物の建て替えの時に条件変更承諾料の授受があったのかどうか、賃料の水準はどうであったかなどを総合的に勘案して、地主と借地人が話し合って決めるのが適切です。借地権割合が決まれば、土地をその比率で分筆して(土地が小さくなり建物の建築に支障があるようでは困りますが)、一方の土地の底地部分ともう一方の土地の借地権部分を交換する方法があります。ただし、交換であっても税務上は底地を借地人に売却し、そのお金でもう一方の借地権部分を借地人から取得したと考えるので、売却益があれば税金がかかります。しかし、一定の要件に該当する場合には、交換の特例(課税の繰り延べ)によって、税金がかからないようにできます。次にその要件を見ていきましょう。
 交換の特例(課税の繰り延べ)の適用を受けるためには、以下の5つの条件を満たす必要があります。
(1) 交換する資産の両方が固定資産であること
(2) 双方が1年以上所有していたものであること
(3) 土地と土地、または建物と建物など同じ種類の資産の交換であること(土地と土地の交換には、土地と借地権の交換も含まれる)
(4) 交換直前と同一の用途に供すること
(土地の場合は交換前が宅地なら、交換後も宅地であれば差しつかえない)
(5) 両物件の価格差が高いほうの20%を超えないこと
 なお、相手方が交換により取得した土地をすぐに売却してしまっても、当方が条件を満たしていれば、当方の特例の適用には支障ありません。
  また、「課税の繰り延べ」とは、本来であれば土地等の譲渡で所得が発生し課税されるところを、次回その土地等を譲渡する時まで譲渡所得による課税を繰り延べることです。これは、特別控除などによる税金が課税されない仕組みとは異なります。
 友人や親戚など特定の個人間で土地の貸し借りがなされる場合には、権利金を支払う慣行のある地域でも権利金の授受がなく、地代も無償または地主さんが負担する固定資産税程度という低額のケースがあります。
 このような場合の権利は、一般的に「使用借権」といわれ、借地権ほど強い権利ではありません。税務上の評価は、使用開始時期により異なります(使用賃借通達による)。なお、税務上の評価がゼロの場合でも、法律上のある程度の権利が認められており、無償で返してもらえないケースもあるようです。
 「使用借権」では、前述の交換の特例の適用を受けることはできません。ただ、仮に「使用借権」ということで双方が合意できるのであれば、借地人の権利は小さいので、「立退料を支払って立ち退いてもらう」か「相手方に土地全体を買い取ってもらう」という選択肢で検討されるのもよいでしょう。