このセミナーの内容は、2007年6月25日現在のものです。

賃貸アパートの家賃相場は横ばい基調が続いていますが、一方で地域格差が鮮明になってきました。東京圏では、人気沿線の東急東横線が含まれる東京・城南地区は上昇傾向を維持していますが、神奈川県の湘南地区や埼玉県の東部中央地区・西部地区では下落傾向です。建物のグレードの違いによる家賃格差も広がっています。こうした傾向は名古屋圏や大阪圏、福岡圏も同じです。住宅新報社の調査から、最近の賃貸アパート市場の動向を探ってみましょう。


 住宅新報社の家賃調査は、毎年、春と秋の2回、東京・名古屋・大阪・福岡の四大都市圏と北海道から九州までの全国主要55都市の成約家賃あるいは成約すると想定される実勢家賃を調べるものです。
  調査対象は、原則として最寄りの駅から徒歩10分前後に立地するアパートで、間取りのタイプは1K〜
1DK(居住面積20〜25u)と2DK(同35〜45u)ですが、地域によっては流通している物件にばらつきがありますから、範囲外の部屋もサンプルとして加えています。
  調査方法は、各駅ごとに賃貸物件の仲介を主に行っている複数の不動産業者からヒアリングで得た情報に一部データによる修正を加え、家賃の上限(新築または築浅)と下限(築10年前後)を集計しています。ただし、相場から極端に外れる事例は除外しています。
  直近の調査(2007年3月1日現在)によると、東京圏の1K〜1DKは上限7万1,918円(前回調査比0.55%上昇)、下限5万4,575円(同1.13%下落)、平均6万3,247円(同0.18%下落)、2DKは上限9万7,486円(同0.36%上昇)、下限7万2,747円(同0.09%上昇)、平均8万5,117円(同0.25%上昇)ですから、全体としては前回の調査(2006年9月1日)と同様に横ばい基調が続いていることが分かります。
  ただ、地域別に見ると大きな違いがあります。人気の東急東横線沿線が含まれる東京・城南地区(品川、大田、目黒、世田谷)は、1K 〜1DKが上限・下限とも約1%、2DKがそれぞれ2%を超える上昇となるなど強含みの相場になっていますし、城東・城西地区や都下は大きな変動がありません。
  これに対して隣接3県は全般的に弱含みの市場で、中でも神奈川県の湘南地区(鎌倉、藤沢、茅ヶ崎など)、埼玉県の東部中央地区(川口、さいたま、岩槻以東)と西部地区(和光、志木、川越、所沢など)では両タイプとも、特に下限で弱含み相場が顕著になっています。

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 東京圏の家賃動向を、もう少し具体的に見ていきましょう。
 調査地点は146地点ですが、個別ポイントで上昇率が大きかったのは1K〜1DKではJR総武線津田沼の平均7.27%、京浜急行本線京急鶴見の同5.47%、東急世田谷線若林の同4.86%、2DKでは東急東横線武蔵小杉の同13.68%、小田急線新百合ヶ丘の同8.19%、JR総武線津田沼の同8.15%がトップ3です。上昇率が大きい地点に共通しているのは、マンション開発が活発で基盤整備が急ピッチで進んでいる武蔵小杉や伝統的な住宅地である若林に代表されるように、どこも生活環境に魅力を感じる、誰もが住みたいと思う街です。
 一方、家賃が最も高額だったのは、今回も1K〜1DKの上限12万8,000 円、下限8万3,000 円で平均10万5,000 円、2DKの上限18万円、下限12万円で平均15万円だった東急東横線代官山ですが、1K〜1DKが平均8万5,500 円、2DKが平均13万8,000 円の中目黒や各9万1,500 円〜13万1,000 円の自由が丘も高値で安定し、トップ3を独占。憧れの東横線は他の沿線に比べると頭ひとつ抜き出ています。人気には“ブランド”が付きものですから、東横線以外でも東急田園都市線の三軒茶屋や二子玉川、小田急線の下北沢や経堂、成城学園前なども高値で安定しています。また、歴史や伝統のある成熟した街、例えば東武東上線の川越、JR中央線の国分寺や立川、JR京浜東北線の浦和なども安定しています。JR東海道線の藤沢、茅ヶ崎あるいはJR横須賀線の鎌倉など湘南地区が下落基調だといいましたが、これは一時期の高騰が落ち着いて安定市場に入る過程だと推測できます。

 街の違いによる家賃格差が鮮明になったことと同時に、どの地域でも上限と下限の幅が一段と広がってきたことに注目しましょう。東横線沿線の人気スポットのように家賃が高値で安定している街は、どこも住環境に恵まれ、年齢を問わず住んでみたいと思える雰囲気が漂っていますから、必然的に上限は上昇します。ところが、そうした街でも下限はアップしてもわずかだし、ほとんどが横ばいですから家賃の幅が広がります。ましてや、全体が弱含みで推移している街は、上限が横ばいでも下限が大幅に下落していますから当然、家賃の幅が広がります。
 こうした傾向は、名古屋圏、大阪圏、福岡圏でも同じです。
 家賃の幅が広がる最大の理由は、部屋のグレードの差以上に家賃の開きが拡大していることです。自分達の快適なくらしが期待できる部屋に住みたい入居希望者は多いので、周辺相場より多少高めの家賃設定でも空室の心配がありません。ところが、築年数の経過した建物で、しかも狭くて設備が古い部屋は家賃を下げても入居者が決まらず、再度下げるという悪循環に陥りますから格差は広がる一方なのです。
 「今や大学生でも古いアパートには入居したがりませんね。子供の頃から父親より立派な部屋を与えられていたわけですから。4月に入っても入居者が決まらなかった部屋は、当分、空室のままだろうと覚悟していますよ」と、東京近郊で主に賃貸住宅の仲介を手掛ける不動産業者が話してくれました。老朽化したアパートは、家賃を多少下げるだけでは空室対策にもならないのです。

 今日の賃貸住宅入居者の多くは、賃貸住宅をマイホームへのワンステップだと考えていません。確かに大都市圏では、大量に供給される分譲マンションを団塊ジュニア世代などが購入していますが、半面、世代を問わず住まいも所有することにこだわらない人達が増えているのも事実です。「必要な時に最適な部屋に住めればO Kだ」という積極的な賃貸派の人達です。
 ただ、積極的な賃貸派の人達には、持家派より住まいに対するこだわりが強い人が意外に多いようです。最寄り駅、部屋の広さ、予算などの希望や条件だけでなく、周辺環境や隣人にまでこだわる人も多く、気に入れば周辺相場より割高の家賃設定でも入居を希望します。
 こうしたケースは極端かもしれませんが、ユーザーの支持を得ている物件はどれも外観デザインやインテリアセンスのよさに加えて、キッチンや浴室など水廻り設備、備え付けの収納、セキュリティ対策が充実している、友人を呼べるちょっと広い部屋です。床面がフルフラットだったり、シャワー付きトイレだったり、オール電化だったりといった、競合物件と差別化した部屋も高い人気です。

 これからのアパート経営は、入居者ニーズにいち早く応えることが成功への道です。仮に所有しているアパートが老朽化しているのであれば、家賃を下げたり、リフォームして維持するのではなく、入居者の希望を満たした最新の建物に建て替えるのも、有効な選択肢ではないでしょうか。

(資料提供:住宅新報社)