このセミナーの内容は、2007年5月25日現在のものです。

今年の税制改正で、減価償却制度が見直されました。平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産については、残存価額がなくなります。また、3月31日以前に取得した減価償却資産についても、償却可能限度額が撤廃され100%償却可能となるなど、減価償却制度の改正内容について解説します。

 減価償却制度の改正ポイントは、以下の(1)〜(3)です。
(1) 平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産については、残存価額(※)が従来の10%から0%になり、残存価額がなくなります。これにより、耐用年数経過時点で備忘価額(1円)を残して全額償却可能となりました。
(2) 平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産については、償却可能限度額(取得価額の95%)が撤廃され、100%償却可能となりました。
(3) 定率法については、定額法適用の250%増しで償却する計算方法が導入されました。
残存価額/耐用年数が経過した後においても、その資産の価値が存在するものとして、廃棄する時の処分見込価額に相当するものをいう。いわゆる下取り価額のようなものだが、近年では処分するのにかえって費用がかかるなど、矛盾点が指摘されていた。
 減価償却価額の計算方法には、定額法と定率法があります。ただし、建物を減価償却する際の計算方法は、平成10年4月1日から定額法だけで、定率法は採用できません。また、設備や器具備品なども所得税の申告では、定額法が原則とされます。定率法を採用される場合は、自分で定率法の届出を提出しないと適用できません。そのため、個人での申告は定額法が中心になると思いますので、ここでは定額法を詳しく説明します。
定額法の改正前・改正後では下記のように、残存価額があるなしの違いがあります。
<改正前>(取得価額-残存価額)×定額法の償却率
<改正後>取得価額×定額法の償却率
定額法の償却率についても、新旧で少し違いがあります。これは、耐用年数20年未満を、小数点以下3位未満の切り捨てから、切り上げに変更したためです。なお、主な物件の新旧の耐用年数別の償却率を示すと、下の図表のようになります。
種類 構造・用途 耐用年数 新定額法による
償却率
旧定額法による
償却率
建物
(店舗・住宅用)
鉄筋コンクリート造
鉄鋼の肉厚 4ミリ超
3ミリ超〜4ミリ
3ミリ以下
木造または合成樹脂造
47年
34年
27年
19年
22年
0.022
0.030
0.038
0.053
0.046
0.022
0.030
   0.037※
0.052
0.046
建物付属設備
給排水設備 等
消火設備
15年
8年
0.067
0.125
0.066
0.125
構築物
舗装路面
  アスファルト路面
  ピチューマスル敷
10年
3年
0.100
0.334
0.100
0.333
器具備品
クーラー・洗濯機
6年 0.167 0.166
※は四捨五入の関係による
 これから例を挙げて、減価償却制度の改正による新定額法での償却費の違いを見ていきましょう。
<例>
建物の取得価額3,000万円、軽量鉄骨3階建、耐用年数27年
【新償却率0.038、旧償却率0.037】
平成19年4月1日以後に減価償却資産を取得した場合の減価償却費の計算方法
3,000万円×0.038=1,140,000円
………新定額法の減価償却費
残存価額の10%基準は廃止されましたから、0.9を取得価額に掛ける必要がなくなりました。なお、取得の日の判定は、建物の完成日や引き渡し日ではなく、建物の賃貸を開始した日をいいます。
平成19年3月31日以前に減価償却資産を取得した場合の減価償却費の計算方法
(1) 耐用年数経過時点の残存価額(取得価額の10%)まで償却します。
1年目の減価償却費  …3,000万円×0.9×0.037=999,000円
27年目の未償却残高…3,000万円−999,000円×27年(26,973,000円)=3,027,000円
ここで、未償却残高は300万円(3,000万円×10%)より27,000円多額ですが、これは償却率が小数点3位未満で切り捨てられているからです。
(2) 残存価額(残存10%)から償却可能限度額(残存5%)までの償却は、耐用年数経過後に行われることとなります。
28年目の未償却残高…3,027,000円−999,000円=2,028,000円
29年目の未償却残高…2,028,000円−999,000円=1,029,000円
29年目は、減価償却費999,000円を差し引きすると未償却残高が1,500,000円(3,000万円×5%)を下回るので、29年目の減価償却費は999,000円ではなく、999,000円−(1,500,000円−1,029,000円)=528,000円となります。この結果、この年の未償却残高は1,500,000円となります。
(3) 改正前の制度では、償却可能限度額(取得価額の95%)までしか償却を行うことができませんでしたが、改正後は償却可能限度額が廃止され、100%償却できるようになりました。そのため、取得価額の5%については、翌年度以後の5年間で均等償却します。なお、備忘価額1円は減価償却資産がある限り残すことになっています。
30年目の減価償却費(1,500,000円−1円)÷5年=300,000円
31年目の減価償却費(1,500,000円−1円)÷5年=300,000円
以後の年も同じ300,000円を減価償却費として、通算で5年間計上できます(円未満切り上げ)。
 また、平成19年12月31日で未償却残高が5%に達した減価償却資産や、平成18年末ですでに5%に達した減価償却資産については、平成20年から上記(3)の計算をすることになります。
 定率法の償却率の計算方法も改正されました。
<改正前>未償却残高×定率法の償却率
<改正後>未償却残高×償却率(新定額法の償却率×2.5)
新定率法は、定額法の償却率を2.5倍した数値の償却率で償却費を計算。この償却費が一定の金額を下回る事業年度から、償却方法を定率法から定額法に切り替え、備忘価額1円まで償却することができます。