このセミナーの内容は、2006年9月25日現在のものです。

アパートなどを経営している地主さんが会社を設立する目的は、所得税や住民税の節税にあります。実際によく行われているのは、妻や子供を役員として会社を設立して、会社に入ってくる収入を家族に給料として支払い節税する方法です。
所得税は累進税率ですから収入を分散させれば1人当たりの所得が減少し、累進税率を引き下げることができます。さらに、給料からはサラリーマンの経費として給与所得控除が所得に応じて適応できますから、全体で見るとダブルの節税効果があります。以下、設例をあげながら説明します。

 父親の土地に父親が建てたアパートなどの賃貸収入が3,000万円、借入金の利息などの経費が1,000万円とすると、差し引き不動産所得が2,000万円になり、所得税・住民税・事業税の合計で7,726,500円の税金となります。
 父親の土地に父親、母親、子供の3人名義で建てた場合を見てみると、それぞれの所得は6,666,666円となり、負担する所得税・住民税・事業税の税額は1,536,300円ずつとなります。この結果、3人の合計で負担する税金の合計額は4,608,900円になりますから、3,117,600円も税金が減少します。これは、1人の場合には所得税・住民税の税率が50%、事業税の税率5%であったのに、3人名義になると税率が所得税・住民税で30%、事業税の事業主控除2,900,000円が3人分となるためです。
 さらに建物名義を会社にした場合は、家賃はまるごと所有会社の収入になります。父親の土地に会社が建物を建て、その役員である父親、母親、子供の3人に給与を6,666,666円ずつ支払うと、給与の場合には、給与所得控除が適用できます。つまり6,666,666円がそのまま所得となるのでなく、給与所得控除1,866,666円を控除した4,800,000円が給与所得として課税対象になりますから、1人当たりの所得税・住民税は825,600円となります。また給与所得に対して事業税は課税されませんので、事業税の節税にもなります。
 このように、1人に集中している所得を3人に分散し、さらに会社名義にして不動産所得を給与所得に変えると、7,726,500円の税金から2,476,800円に税金が減少しますので、差し引き5,249,700円も節税できることになります。
 このように、会社を利用した場合に大幅な節税ができることから、今年の税制改正で「実質一人会社のオーナー社長報酬につき、給与所得控除額を、法人段階で損金不算入とする」という改正が行われました。
 しかし、この改正が適用されたとしても、父親の給与所得控除1,866,666円に法人税の税率40%をかけた746,600円増加するだけですから節税効果は改正後でも4,503,100円もあります。したがって、会社にすると税金が安くなるという考えに変化はありません。
 ここで、「実質一人会社」とは、親族などの同族関係者で株式の90%以上を保有し、常勤役員の過半数を占める会社をいいます。通常、家族で経営している同族会社は、この規定にほとんど該当することになります。しかし、次の場合は適用から除外され課税されません。
(1) 所得(法人所得+オーナー社長報酬との合計額の直近3年間の平均額)が800万円以下の場合
(2) (1)の所得が3,000万円以下で、社長報酬の占める比率が1/2以下の場合
 会社は、土地の持ち主が他人ならば支払うであろう権利金と地代を支払う義務があります。そのため地代などを支払わないで土地を利用すると、会社は本来支払うべき権利金と地代の贈与を受けたとして、法人税が課税されます。ただし、会社に税金が課税されないようにするためには、次の3つの方法があります。
イ、 地代を無償で使用する方法。
会社は父親から無償(使用貸借)で土地を借りますが、税務署に「土地無償返還に関する届出書」を提出します。
ロ、 通常の地代を支払う方法。
イと同じく「土地無償返還に関する届出書」を税務署に提出しますが、地代は無償ではなく、固定資産税の3〜5倍の地代「通常の地代」を支払う方法です。
ハ、 相当の地代を支払う方法。
税務署に「相当の地代に関する届出書」を提出しますが、「通常の地代」ではなく、土地の相続税評価額の6%を年間地代(相当の地代)として支払う方法です。
 これらのうち、「無償使用」と「通常の地代」を支払う方法がよく利用されています。