このセミナーの内容は、2008年7月25日現在のものです。

不動産所得のある人は、一定の記帳がなされることを条件に、税務申告で「青色申告」という制度を利用することができます。「青色申告」にはさまざまな特典がありますが、今回は「青色事業専従者給与」について、詳しく見てみましょう。
【青色申告とは】
不動産所得・事業所得・山林所得のある人が、所得税の申告において一般の記帳より水準の高い記帳をし、その帳簿に基づいて正しい申告をする場合には、所得の計算などについて有利な取り扱いが受けられます。その制度を「青色申告」といいます。新たに青色申告をする場合は、所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出します。

 青色申告者には、賃貸住宅経営の規模に関係なく、「赤字損失の3年間繰越し控除」「10万円の青色申告特別控除」などのメリットがあります。
 さらに、個人の賃貸住宅経営で、部屋数が10室以上あるなどの一定の条件を満たす場合には、事業的規模ということになり、「特別控除が65万円にアップ(ただし複式簿記の記帳と貸借対照表の提出が必要)」「『青色事業専従者給与』が利用できる」など、メリットがかなり拡大します。
 このうち、「青色事業専従者給与」を利用すると、生計を一にする親族に給与を支払って、それを必要経費にすることができます。あらかじめ「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しておけば、奥さんや同居の子などの家族従業員に支払うものであっても、必要経費への算入が認められるというわけです。「あらかじめ」というのは、給与を支払う年の3月15日までに、ということです(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合は、その事業開始日から2か月以内)。
 次に、「青色事業専従者給与」がどのくらいの節税につながるのかを確認してみましょう。
 賃貸住宅の部屋数が15室、年収が1,200万円、収入から諸経費と所得控除を差し引いた課税所得が500万円レベルの実例をもとに、比較をしてみました。
■ 図表:「青色事業専従者給与」による節税額の試算
ケース
事業主の税金
家族従業員の税金
(1) ・「青色事業専従者給与」として100万円を支払う
・配偶者控除・扶養控除は受けられない
約80万円 0万円
(2) ・「青色事業専従者給与」制度を使わない
・配偶者控除・扶養控除を受ける
約100万円 0万円
(1)と(2)の差額(節税額) 約20万円 0万円
税金は所得税と住民税の合計です。
 図表のケース(1)では、「青色事業専従者給与」として年100万円を支払うこととしました。なお、配偶者控除または扶養控除はなしとなります。
 ケース(2)では、「青色事業専従者給与」制度を使わないで、配偶者控除または扶養控除を受けることとしました。
 ケース(1)のように、家族従業員を事業専従者として届け出た場合は、給与の多少にかかわらず、その者は配偶者控除または扶養控除の対象にはならないので、注意が必要です。
 ではなぜ、前述のように「青色事業専従者給与」を利用すると約20万円の節税になるのでしょうか。
 「青色事業専従者給与」は事業主の必要経費になる一方で、家族従業員の所得になります。わが国の所得税は、所得が高くなるにつれて税率も高くなる累進税率となっているため、事業主の高い税率の所得が減って、家族従業員の低い税率の所得が増えると、家族全体としては節税につながるというわけです。
 さらにうれしいことに、給与収入は全部課税されるわけではありません。収入から給与所得控除(最低でも65万円ある)や基礎控除などを差し引いた残額が課税となるため、給与収入が100万円のケースでは税額はゼロになります。仮に給与が2倍の200万円であったとしても、同じように給与所得控除などを差し引いた後の残額に税金が掛かるために、税金はそれほど高額にはなりません。
 課税所得が500万〜800万円程度であれば、この「青色事業専従者給与」の仕組みをよく理解して、きちんと適用を受けることは、重要な節税のポイントとなります。
 さらに事業の規模が大きい場合には、個人事業を法人化して、不動産管理会社を設立するのも有効な方法です。