このセミナーの内容は、2006年5月25日現在のものです。

アパートを建てて人に貸すことを、ごく簡単に考えている人が多いようです。しかし、人に貸して毎月収入を得ることになれば「事業」ですから、そう簡単にことが運びません。事業となれば、勝手気ままにできないのです。そこで、新たにアパート経営を始めるオーナーさまのために、個人事業での新規開業時に提出が必要な書類をまとめてみました。

 アパート経営を新規開業する場合、事業開始から1ヵ月以内に「開廃業等届出書」を税務署(県税事務所、市役所)に提出します。なお、開業時から青色申告を選択する場合には、事業開始から2ヵ月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。青色申告とは、一定の帳簿を作成・保管することを条件に、青色申告特別控除や青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の繰越控除などの税務上の特典が設けられた制度で、開業初年度からぜひ採用したい規定です。
 ところで、青色申告を選択すると税務調査があり、白色申告だと税務調査がないと、誤解をしてる方もいるようですが、税務調査と青色申告は関係ありません。青色申告を選択すると「帳簿を作成・保管」しなければいけないので多少の負担はかかりますが、健全な経営のためにも、家賃収入や経費をきちんと管理しておくことは必要です。
 従業員に給与を支払う場合には、給与の支払事務を始めた日から1ヵ月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を、税務署に提出する必要があります(「開廃業等届出書」を提出する場合には内容が重複するので「給与支払事務所等の開設届出書」の方は提出不要となります)。
 家族(同一生計の親族)従業員の給与は原則として経費になりません。経費にするためには、事業開始から2ヵ月以内に「青色申告承認申請書」にあわせて「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があります。
 給与を支払う者は、給与から所得税を源泉徴収して翌月10日までに国に納付をしなければなりません。毎月処理するのは大変ですので、給与等の受給者が10人未満の事業所では「納期の特例」が認められています。適用を受ける月の前月末までに、あらかじめ「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しておくと、1〜6月分は7月10日まで、7〜12月分は翌年1月10日(さらに特例を申請すると
1月20日)までとなり、半年分をまとめて納付することができるようになります。
 新規取得固定資産の減価償却方法は、建物は定額法と決まっていますが、建物附属設備や構築物、什器備品などは定率法を選択することもできます。その場合には、取得の年の翌年3月15日までに「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を税務署に提出する必要があります。
 以前から所有していた固定資産の減価償却方法を、定額法から定率法などに変更しようとする場合には変更しようとする年の3月15日までに、「所得税の減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を税務署に提出する必要があります。
 新規開業の個人事業の場合には、通常は基準期間(前々年)の課税売上高がゼロのため、開業1年目と2年目は、消費税の免税事業者となります。そこで消費税の還付を受けたい場合などでは、あえて課税事業者を選択することがあります。具体的には「課税事業者選択届出書(第1号様式)」を、新たに事業を開始した年の末日までに税務署に提出する必要があります。
 なお、古いアパートを取り壊して新しいアパートに建て替えるケースは、「新規開業」にあたりません。このケースでの「課税事業者選択届出書」の提出期限は、原則として前年の末日までとなりますので、注意が必要です。
内 容 提出書類の名称 提出期限
開業等  事業開始の届出  個人事業の
 開廃業等届出書
 開業から1ヵ月以内
 青色申告を選択  青色申告承認申請書  1月15日までに開業の場合
 →その年の3月15日まで
 1月16日以降に開業の場合
 →開業から2ヵ月以内
 ある年から青色申告にしたい
 場合→その年の3月15日まで
給 与  従業員に
 給与を支払う
 給与支払事務所等の
 開設届出書
 給与の支払事務を始めた
 日から1ヵ月以内
 同一生計親族に
 専従者給与を支払い
 必要経費にしたい
 青色事業専従者給与
 に関する届出書
 1月15日までに開業の場合
 →その年の3月15日まで
 1月16日以降に開業の場合
 →開業から2ヵ月以内
 ある年から青色専従者給与を
 必要経費にしたい場合
 →その年の3月15日まで
 源泉所得税の納付を
 年2回にする
 源泉所得税の
 納期の特例の承認
 に関する届出書
 適用を受ける月の前月
 7〜12月分の納期限を
 翌年1月20日にする
 納期の特例適用者に
 係る納期限の
 特例に関する届出書
 その年の12月20日まで
減価償却  新規取得資産で
 定率法を採用
 所得税の減価償却資産の
 償却方法の届出書
 取得の年の翌年の
 3月15日まで
 定額法を
 定率法に変更
 所得税の減価償却資産の
 償却方法の変更承認申請書
 選択しようとする年の
 3月15日まで
消費税  基準期間の課税売上高が
 1千万円超となった場合
 課税事業者届出書
 (第3号様式)
 速やかに
 免税期間について
 課税事業者を選択したい場合
 課税事業者選択届出書
 (第1号様式)
 新たに事業を開始した場合
 →その年の末日
 継続事業の場合
 →前年の末日