このセミナーの内容は、2008年6月25日現在のものです。

三大都市圏における2008年1〜3月の新築賃貸住宅の供給傾向と賃料を調査。それを基に、2008年の賃貸住宅市場の動向を分析しました。人気エリアの共通のキーワードは、「利便性」と「環境」。今年度は、需要集中地域と需要離れ地域の二極化傾向に拍車がかかると予想されます。

 三大都市圏の主要都市について、2008年1〜3月の新築賃貸住宅の傾向を調査したところ、以下の点が指摘されます。
(1) いずれの都市においても、人気エリアの共通のキーワードは「利便性」と「環境」。特に首都圏では、東急東横線沿線の「自由が丘」に代表されるように、街の「ブランド」が定着しつつあります。
(2) 名古屋市及び近畿三都市(大阪市・神戸市・京都市)は、都心回帰の影響から需要・供給ともに都心に集中。「住環境」より「利便性」を優先する傾向が見られます。
(3) 三大都市圏とも、供給の主流は「40m²未満」のシングル向けタイプ。ファミリー向けの「50m²以上」のタイプは、供給が激減しています。
 景気後退要因や現況を交え、2008年の不動産市場、賃貸住宅市場の動向について予測してみました。
〔不動産市場の予測
 2007年後半は、以下の景気後退要因により不動産市況が悪化しました。
(1) 米国住宅バブル崩壊に端を発したサブプライム問題で、全世界的に金融不安を生じせしめ、クレジット市場、株式市場、為替市場に影響を及ぼした。
(2) 原油高により製品価格、サービス価格が上昇。
(3) 建築基準法の改正による建築確認許可の長期化に伴い、新設住宅着工戸数は9カ月連続(2008年3月時点)でマイナスを記録した。
(4) 建設業界から始まった「偽装」が食品業界にも及び、消費者の信頼を損ねて購買意欲が減退。
 (1)〜(4)の景気後退要因は、住宅地に以下のような影響を与えています。
先行不安から、住宅取得の手控え。
勤労者世帯可処分所得が伸び悩んでいるにもかかわらず、地価・建築費は上昇。
 このため、2007年後半から住宅取得意欲が減退し、地価が上昇していた地域にもストップ感が出始めています。2008年前期までは、地価上昇に転じていた住宅地の価格は、概ね横ばい傾向となるものと予測します。
〔賃貸住宅市場の予測
 2005・2006年は、ファンドによる都心部での占有面積25m²前後の賃貸マンションの供給が相次ぎました。また、分譲マンションも投資家向けの25〜30m²のワンルームマンションが急増しており、都心でのシングル向けタイプは賃貸・分譲とも競争が激化しています。しかしながら、都心部に移り住む需要層は、年齢20〜25歳が最も多く、賃料負担力は低いのが実情。にもかかわらず、シングル向けタイプは総額賃料が上昇しており、需給ミスマッチが起きています。
 また、2006年後半から建築費の上昇が顕著になっていますが、建築費の上昇を賃料に転嫁できるほど需要は回復していません。賃貸供給は、建築基準法改正の影響のみならず、その大量供給の担い手であったJリート・ファンドの手控えから供給調整が進んでおり、2008年の新規賃貸供給量は減少するものと予測されます。2008年の新規賃料については、賃料ピーク観が出始めている地域が数多く観察され、特に都心部の賃料が頭打ちとなっています。今年後半にかけては新規賃料調整(下方修正)エリアが増加すると予測します。
(1) 人口流出に歯止め、需要増が期待できる近畿圏
三大都市圏のうち、東京圏・名古屋圏の転入増加に対し、関西圏は1974年以降、転出超過による人口減が続行していましたが、転出超過数は年々減少しつつあります。その原因としては、2002年に工場等制限法が廃止されて以来、関西の工場立地件数が増加していることに関連していると推測されます。
(2) シングルの都心居住指向は続く
大阪市で調査すると、1人世帯の割合は浪速区・中央区が64%台、北区が54%台で、他区は50%を割っています。区人口に対する単身者の割合は、中央区がトップで39%台、次いで浪速区38%台、北区29%台。その他の区は22%台であることからも、都心部にシングル需要が集中し、この傾向は今後も続くと見られます。
(3) ファミリー需要は「利便性」プラス「住環境」
今の住宅需要のキーワードは「利便性」、すなわち「時間の短縮」ですが、ファミリー需要は「利便性」の他、教育施設・利便施設・公益施設の充実に着目した「住環境」も重要視しています。近年、この2つのキーワードを実現できる立地に需要は集中しています。
(4) 賃貸住宅市場の二極化が進む
上記(1)〜(3)の需要行動と少子高齢化による人口減少が相まって、需要集中地域と需要離れ地域(二次交通を利用する、もしくは都心へのアクセスが悪い地域)の二極化傾向に拍車がかかると考えられます。