このセミナーの内容は、2006年4月25日現在のものです。

アパート経営の経理で、ごく普通に計算していても計算書通りに現金がなかったりして、あわてることがあります。うっかりすると、「黒字倒産」などということにもなりかねません。なぜ、そんなことが起きるのか知る必要があります。それを理解していただくために、今回はキャッシュフローの仕組みについて考えてみることにしましょう。

 「家賃が下がっているのに所得が増加するのはなぜか」、「手元に現金があまり残らないのに税金ばかり増えているのはなぜか」、「借入金の返済が大変だ」などの資金繰りでの悩み相談が増えています。「黒字倒産」とか「勘定合って銭足らず」という言葉がありますが、これは、損益計算書では所得が出ているにもかかわらず、現金がないため会社が倒産したり、資金繰りに困ってしまうというものです。これを理解するのには、キャッシュフローの仕組みを知ることが大事です。
 キャッシュフローとは、現金・預金の流れを計算するものです。いくら現金・預金を増やせたかの計算をするのがキャッシュフロー計算書です。現金・預金が流出したらキャッシュのマイナスで、流入したらプラスです。
 所得とキャッシュフローの違いを理解するために、所得の計算と、キャッシュフロー計算書を下記の事例で説明してみましょう。
■元利均等返済方式の場合
(1)不動産所得と税金の計算
 ここでの所得は、計算を簡略するために借入金の利息と減価償却費を控除する前の金額からスタートしました(下記図表1参照)。この金額は、賃料などの現金収入から固定資産税、修繕費、管理費などの現金支出を差し引いた金額です。借入金の返済は、元利均等返済方式ですから、返済額は30年間一定額ですが、返済が始まった当初は利息の占める割合が高く、返済が進むにつれて利息分が減って元金の割合が高くなります。
 不動産所得は、利息の減少にしたがって緩やかに増加していきます。また、設備の減価償却費が計上できる15年目までは、増加はなだらかですが、設備の償却が終了する16年目以降は急に所得と税金が増加します。
(2)キャッシュフロー計算書
 不動産所得のキャッシュフローは、不動産所得−元金返済額+減価償却費=税引き前キャッシュフローで計算します(下記図表2参照)。この金額は、利息の減少や減価償却費の減少に関係なく変化がありません。つまり、現金収入と現金の支出が一定ならば、不動産所得の変化に関係なく税引前キャッシュフローは同額になります。
 事例では、現金の出入りがともなう、所得を12,000,000円で30年間同額としましたので、税引前キャッシュフローは、7,258,549円で同額です。
 税引後のキャッシュフローである現金手取り金額は、所得の増加によって、税金が増加していますので、毎年減少します。
 減少は、15年目までは大幅ではないですが、16年目からは手取りが急減します。魔の16年目などといわれ、塗装工事や風呂釜の交換などの修繕の支出も多額に発生して資金繰りが大変になる時期です。
<考え方>
 家賃が下がっているのに所得は増加するのは、利息と減価償却費の減少によって、経費が減少し、家賃の減少よりこれらの影響が大きいためです。また手元に現金があまり残らないのに税金ばかり増えているのは、税引前キャッシュフローが不変でも、所得の増加の結果、税金が増加したため、現金手取り収入の減少による影響が大きいためです。そこで、借入金の返済で元金均等返済方式を採用した場合にこの問題点が解決されるのか検討してみましょう。
■元金均等返済方式の場合
(3)不動産所得と税金の計算
 元金均等返済方式は、返済額に占める元金の金額が定額のタイプで、利息のみが変化します(下記図表3参照)。元金と利息を合計した返済額は、返済を始めた当初が高く、返済が進むとだんだん低くなり、後になるほど負担が軽くなる仕組みです。元利均等返済に比べて元金の減り方が早く、支払利息の総額も少なくなります。
 元金均等返済でも、15年目までは所得も税金もなだらかに増加します。16年目以降は、やはり設備の減価償却費が終了するので、税金が急増するのは同じです。
(4)キャッシュフロー計算書
 元金均等返済方式は、元利均等返済方式と違い、返済額が毎年減少するので、税引前キャッシュフローは毎年確実に増加します(下記図表4参照)。元利均等方式と違い16年目以降も税引後キャッシュフローである現金手取り収入は安定しています。これなら、魔の16年目は無事に越せそうです。
<結論>
 元金均等返済方式でも所得の増加と税金の増加は元利均等返済方式とほぼ同じ傾向です。しかし、税引前キャッシュフローは利息の減少に伴い返済も減少しますので、毎年増加します。この結果、税引後キャッシュフローである現金手取り収入は安定した推移をしています。
 アパート、マンション経営は、建物が新しいうちは、入居も安定し家賃も値下がりし難いですが、古くなるとそうは行きません。ですから、早く借入金の元金が減少する、元金均等返済方式が優れていることになります。